第8話 【オーガ】変異種に会うまで30体 3
ダンジョンの奥へ向かう途中、地面の下から何かが来る気配がした。
何かはわからないけど、とりあえずここから離れよう。そのまま急いで直進するとすぐに後ろから何かが砕ける音がした。
鬼? 音が何かは気にはなるが、それよりも鬼ならこれからの攻撃に備えないと。急いで魔力を集中し、他の魔力の気配を探る。
ってやっぱり気配を消しているか、何の気配もしな……あっ、いや。一つあるな。私の走っている先の地中からだ。
鬼の攻撃かな? 急いで止まり、気配のしないとこまで飛び上がりながら移動する。
鬼が飛び出てきたら攻撃をしよう。そのまま気配があった場所を見ているとすぐに岩が砕けるような大きな音と共に、目の前の地面からまるで槍のように岩が突き出た。
岩……ってことは黄鬼か。そのまま黄鬼が飛び出してくると思ったが、出てくる気配はない。どうやら自分は隠れて攻撃しているようだ。なら黄鬼を探さないと。再び魔力を探る。
「っと……」
私が探るのを邪魔をするように地面から魔力の気配がした。避けるのは大変じゃないけど集中しているのを邪魔されるのはきついな。ってそんな事を考えている場合じゃない。急いで避ける。
避け終わり、再び黄鬼の気配を探るが、また岩の槍が邪魔をする。
「あぁ、もうっ」
避けて黄鬼の気配を探ろうとするが、その度に岩の槍に邪魔をされてしまう。簡単に避けられてはいるが、このままじゃ埒が明かない。
思い通りに戦えずイライラしてきそうになるが、ここでイライラしてはいけない。
冷静にならないと。ゆっくり息を吐き、急いで魔力の気配から離れる。すぐに岩が砕ける音がした。
このままじゃ防戦一方だし、反撃を考えないと。けど全く思い浮かばない。そもそも黄鬼の場所がわからないし、見つけて戦うと言う正攻法がイメージ出来ない。
一番可能性があるのは? やっぱり避け続けて黄鬼のスタミナ切れを期待するとか? これだけ強い攻撃だし、粘っていたら黄鬼もスタミナ切れするだろう。
ならいったん待ちか。このまま耐久をするなら探知に使っている魔力も節約した方が良いな。
なら魔力の気配を探るのはやめた方が良いかな? 何回もやり直すと疲れるし、避けるだけなら魔力を使わなくても気配がわかる。んー。けど最初ギリギリだったな。
集中しなくても発動出来るくらいに魔力を減らしてみるか。まだ体力にも余裕があるし、今なら少しくらい反応が遅れても対処出来る。やってみる価値はあるな。よし、次の攻撃を避けたら試そう。
魔力の気配がしたので、急いで避けるように走るとすぐに後ろから岩が崩れるような音がした。
今だ。呼吸をするくらいに意識しないで発動させる。
あっ、成功したみたいだ。先ほどよりも気付くタイミングは遅れているけど、何もしない時よりも察知しやすい。これなら楽に耐久が出来そうだ。
そのまま黄鬼の攻撃を避けた瞬間。少し離れた所に何かの気配があった。ん? あれ。探知が出来ている?
よくわからないけど、運が良いな。これなら探知を気にせずに戦える。それよりこの気配だ。
先ほどの攻撃とは違う場所に魔力を感じた。土の攻撃には遠すぎるし……もしかして黄鬼? 考えようとしているとすぐに目の前の地面から魔力の気配がする、後ろに下がって避けると槍のような岩が盛り上がった。
そして同じ気配がする。やっぱり黄鬼っぽいな。黄鬼は私が気付いたことに気付いていないらしい。先ほどと同じ場所から土で攻撃していた。
私が気付いていることを察知されないように黄鬼の攻撃を避けながら、火の射程に入るように少しずつ近付く。
五回くらい近づきながら避けるとうまく射程範囲に入れた。後は黄鬼の攻撃を待つだけ。土の魔力を地面に感じた瞬間。急いで黄鬼の方に避け、黄鬼の気配がする場所に向けて小さな火柱をあげる。
やっぱり攻撃をしている時は反応できないようだ。黄鬼は抵抗する事がなかった。
すぐに火柱を通して黄鬼の魔力を感じる。黄鬼の魔力が消えると黄鬼の気配も一緒に消えた
「まずは一匹……」
何とか討伐出来たし、ダンジョンの奥に進もう。伝えようと竜輝さんを探そうとしたら、別の魔力を感じた。急いで魔力の方向を見るが何もない。そのまま警戒しながら気配のした方向を見ると小さな竜巻がこっちへ向かってくる。
緑鬼の風か。風なら簡単に対処出来る。
向かって来る竜巻に小さな火を当てるだけだ。小さな火なので最初は風に飲み込まれてしまうが、火は消えずに勢いを増して、風を制圧する。最終的に風が火柱に変わるとすぐに消えた。
よし。うまくいった。風は標的も大きいし、そこまでスピードが出ていないしいける。
再び風が向かって来るので、先ほどと同じように小さな火を当て火柱へ変える。それにしても大体の場所はわかるけど、鬼の姿が見えないのは何でだろう。
「なんで出て来ないんだろう……」
「きっと僕の光で正攻法は通じないと思われたみたいですね」
竜輝さんの声が聞こえた。急に声をかけられるのはびっくりする。そのまま声の方向を見ると私の隣に竜輝さんが立っていた。え? いつ現れたんだ。急すぎてびっくりした。
「えっ、あっ」
「場所はわかっているみたいですし、問題はなさそうですね。真白。頑張って下さいね」
そのままじっと見つめていると竜輝さんが爽やかな笑顔で言う。元凶のくせになんだか人ごとのように話していて少しだけ腹が立った。
自称ペットと封鎖ダンジョン攻略~新人ダンジョン配信者、竜に魅入られてバズる~ 黒崎ちか @chika_k
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