第2話 【こみゅ限定】一週間振り返り雑談 2

 コントロール力に優れているから勝手に力が制御されてる。そんな話は聞いた事がない。初耳だ。

 その話がピンと来ないので、そのままコメントを見ていると、結構有名な話なのかリスナーさんの大半がその内容をコメントしていた。

 なんでリスナーさんは知っているんだろう。


「力が制御されていると言う話を伺いたいのですか?」


 これって私が知らないのはまずいのでは? 少し恥ずかしいけど恐る恐るカメラに向かって尋ねる。

 するとすぐにコメントが流れた。


『羊川さんの考察動画です!』

『真白さん。知らないなら気にしないで』

『やっぱただの考察動画か』

『信憑性あったから信じていたのに』


 ん? 考察動画。もしかして私の考察動画があるの?


「あの、私の考察動画が出ているんですか?」


 カメラに向かって尋ねながらコメントを見る。すぐにコメントが流れた。


『結構出てる』

『切り抜きはないけど、解説とか考察はたくさん出てる』

『切り抜きはあかん』

『切り抜きはダメでしょ』

『冒険者視点の真白ちゃん解説動画は再生数が稼げるからな』

『真白ちゃんはゴブリン耐久に火の壁と話題がつきないから』

『流石真白ちゃん』


 リンドヴルムさんが来てからネットに触れていなかった。と言うかそれどころかじゃなかった上にスマホもPCもリンドヴルムさんが使っていたから、配信タグの確認と魔衛庁からの連絡しかチェックしていなかった。

 だから実際どうなっているかは知らないけど、何となく凄い事になっている事がわかった。

 ん? 私の解説動画って問題ないかな? 配信が終わってから考えないと。先生にも言っておいた方が良いかな。

 今はこれ以上考えてどうにもならないし、とりあえず、リンドヴルムさんの反応を見よう。

 そう思いながらリンドヴルムさんへ視線を送ると興味深いと言う表情で笑っていた。


「どうしたんですか?」

「真白の力が制限されているって面白い事を言う人がいるんですね」

「面白い?」

「正解ですよ。真白の事をよく見ていますね」


 リンドヴルムさんが感心するように言った。私の力が制御されている。それはどうやら本当らしい。と言うかそれって、言って良いのかな? いったんリンドヴルムさんの様子を見ていよう。コメントを見ながらリンドヴルムさんの言葉を待つ。


『正解なのか』

『まじか』

『よく見ているって。なんだろうこの余裕』

『どうせリンドヴルムの方が羊川の事知っているからだろ。知らんけど』


「僕の方が真白の事を知っている? もちろんですよ」


 自信たっぷりで言った。本当によく言えるな。そのまま見ているとリンドヴルムさんが誇らしげな表情をする。そしてゆっくりと話を続けた。


「ふふっ。せっかくですし、真白のコントロールについて話しましょうか」


『ま?』

『言って良い話?』

『無理して言うなよ』

『チキンレースは止めてくれ』

『消されるなら言わなくて良いからな』


 やっぱりリスナーさん達も心配している。この雑談は一言間違えるとお蔵入りになっちゃうからな。


「解説動画があがっているのでしたらきっと問題ないですよ。それに真白のコントロールが高いというのは知られていますからね。その話の延長ですよ」


『確かに』

『あの動画も消されていないしな』

『きっと大丈夫やろ』

『気になっても魔衛庁に勝手に問い合わせるなよ』

『魔衛庁に問い合わせ×』

『魔衛庁を困らせるなよ』


 一気にコメントが流れる。最近はリスナーさんが率先して注意喚起してくれている。だからか私とリンドヴルムさんはあまり迷惑かける事なく配信できている。本当に優しいリスナーさん達だ。


「僕は話題にあがっている動画は見ていないので、動画の通りとは言えませんが。出会った時の真白は同レベルの冒険者の七割くらいしか出せていなかったですね」


 リンドヴルムさんがそのまま言った。普通の冒険者の七割くらい。同期の友達に比べると弱かったけど、そう言う理由もあったんだ。


「今は同レベルの冒険者より真白の方が出せてます」


 考えながら見ているとリンドヴルムさんが続けた。あれ? 六割じゃないの? 突然変わらないで欲しい。


「六割じゃないんですか?」

「ある程度レベルがあがると今度は意識的にコントロールするようになるんですよ」

「意識的にコントロールをするんですか?」

「真白は簡単に最適な魔力を出せるから気にする必要はないです」


 確かに魔力が上がると魔力で盾や弓を作ったり色々出来る。だからコントロールが必要になってくるんだ。そう言えば今日、火の壁も出したら雑誌サイズになっていた。大きくなるが試してみたが、結局は最初のように新聞紙のサイズになることはなかった。


「そう言えば今朝の火の壁は小さかったですね」

「ええ。真白と同じレベルでしたら単行本サイズの盾になりますよ」

「えっ!」

「ふふっ、真白は凄いでしょ」


『結論:真白ちゃんは凄い』

『ただの飼い主自慢か』

『知ってた』

『奇遇だな。ワイも知ってる』


 それを見てリンドヴルムさんが目を細めた。


「ふふっ。そして僕はそんな素敵な真白に拾って貰い唯一のペットになりました。そしてペットとして魔衛庁に行くことになって、質問配信でしたね。質問配信は本配信を見て貰うとして、次に行きましょうか」

「振り返らないんですか?」

「ほら、うっかり話していけないことを話したら良くないですし」


『了解です』

『りょ』

『せやな』

『よし、次に行こう』


 リスナーさんがそう言ってくれると助かる。と言うか皆さんコメントで同意してくれるのが助かる。


「皆さん、いつもありがとうございます」


 カメラに向けて頭を下げた。

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