進歩って、するんじゃなくてやるんだから。

次の日の朝。

昨日の宿に足を運んでいた。

そして、オリーブさんの部屋の鍵が開いていたので、ドアノブに手をかけた。

思いっきり、肺に酸素を取り入れて、ハキハキとした口調で!


「役立たずですが、よろしくお願いします!」

「ひっ!不審者⁉」


すると、なぜか目の前陶器の花瓶が。


「えっ⁉」


私はその花瓶を、咄嗟に水魔法で跳ね返していた。

そして、跳ね返された陶器は曲線を描き、オリーブさんのほうへ飛んで行った。


「うぇッッ⁉来ないでぇェェェェェ⁉」

ヒュン


風音が聞こえた瞬間……。


パリンパリンっ

ゴトゴト……バンッ


一斉に耳をふさぎたくなる、ものが落ちる音、壊れる音がした後に。


「「あれ……」」


砂埃が舞い、それが晴れると、オリーブさんと目を合わせた。

これ……これ……。


「「やばい、怒られる」」




「よし、ダリア、こうなったら魔法を使うしかない」

「もちろんです」


しっかり見つめあい、大きく頷く。

ぎゅっと杖を手に取ったオリーブさんが時空魔法で数十秒前へ戻す。

すると、瞬きをすると、部屋の玄関にいた。そして部屋の居間では……。

花瓶を投げるポーズをしたオリーブさんがたっていた。


「よし。これで元通りよ」


花瓶をもとの場所に戻したオリーブさんは、誇らしげそうににんまり笑った。


「すごいですね。初めて時空魔法を見ました!」

「そう?普通だけど」


オリーブさんの答えを聞いた私は、驚き、小さくつぶやいた。


「や、やっぱり私が入っちゃいけないパーティかも……」

「あのね……。ダリア、身の程知らず、って言われたことはないかしら」

「えっ、私、身の程知らず、ですか……?」

「だから、ショック受けんな。謙虚っていう意味だし」

「お世辞ありがとうございます」

「嘘。お世辞に聞こえたん?」

「まあ、私にそのような力はないですしね」

「こほん。それはともかく、さっき、よろしくお願いしますって言ったね?」

「はい、まあ」


人差し指を上に向け、オリーブさんははきはきした口調で言った。


「このパーティに入るってことは、それなりに進歩しなくちゃいけない」

「進歩する、ですか」

「決して、アンタが弱いってことじゃないのよ。でも、限界は超えるものっていうでしょ?だから、もっと努力しないと、あたしみたいな天才には認められても、リオルのような努力した人には認められないのよ」

「なる、ほど」

「それでさっき、進歩する、ってダリアは言ったけど、進歩って、するんじゃなくってやるんだから」

「……そうですね。これから努力すれば、オリーブさんたちみたいに、強くなれるでしょうか」

「当たり前でしょ。成れなきゃここに誘ってないし。もし強くなれなかったなら……あたしたちは、あんたを切り捨てる」

「―――――⁉」


その眼付きの鋭さに、私は首をすくめ、逃げ惑う獲物になった気分がした。

そんな様子を見た彼女は、ふにゃっと表情を変え、


「まあ、ダリアは大丈夫だと思うから、安心して」


と笑った。


オリーブさんの金髪は、窓からくる風に煽られ舞い上がるのが、不気味に感じてしまった。

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死にかけたヒーラーですが、未来の勇者に救われ、最強のヒーラーになった件について。 いなずま。 @rakki-7

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