真夜中のデュアルシスター



 サラークは何だか寝付けなかった。


「んん……」


 なので姉のところに行った。ちなみに隣で寝ている。布団の上を転がっていっただけである。幸せそうに涎を垂らす表情に悪戯を……


ぱくり


 頬をつつこうとしたら噛みつかれた。そのまま哺乳瓶のようにちゅっちゅっと吸い付いてくる。妙な感情を抱きつつ眺め始め


ガリッ


「びゅいっ!?」


 噛まれた。とてもいたい。



「サラぁ~ねんねしようね~」

「むぅうう」


 目が覚めた姉にじゃれつかれてもみくちゃにされる。すりすりすりとほっぺたがもみあげに擦り付いてくる。絡み方が酔っ払いのそれとほぼ同じであった。

 ぺいっと剥がすとあぃ~と鳴き声を上げて布団へ落ちた。ころころと転がって足元に再度くっついてくる。


「サラのふとももは柔らかいねぇ」

「んッ!」

「ぇあ~」


 ふにふに触ってくるセクハラお姉ちゃんを踵で押し返す。この姉は……本当にもう。

 と、溜め息を吐いた一瞬を見逃さなかった。視界が塞がった瞬間に妹を押し倒して手首を掴む。脚も押さえ付けて逃走出来なくして……


「可愛くて食べちゃいたいよぉ」

「お姉ちゃん……」


 満足そうに昼寝をするラクダのような表情でふんすふんすと匂いを嗅ぐ。甘くて少し香ばしい香りが鼻腔をくすぐる。くすぐる。くすぐ


「くちゅんッ!!!!!!!!!」

「おねぢゅッ!?!?!?!?!?!?!?」


 可愛いがありとあらゆる液体を顔面に撒き散らすくしゃみが顔にかかる。どうやら髪が鼻に入ったらしい。ばっちい。


「うぇー……」

「はなみづでだ」

「拭くな!!!!!!!!!」


 首元に鼻水を拭き付けると妹からお叱りを食らった。じゃあ髪しかないか。もふもふにべたべたを合わせてマリアージュである。




 顔を洗ったことで完全に眠れないサラークとちょっとスッキリしたスノザートは、広間へと場所を移して眠気が来るまで寛ぐことにした。


 キメ顔でオセロを取り出した姉が5連勝した。


「いやお姉ちゃんさ!」

「?」

「半分寝ながらで勝たれるとすごく悔しい!」

「やーいやーい」

「……ッ!」


 キメ顔で将棋を持ち出した妹が3連敗した。


「に"ゅ"」

「崖から落ちた蛙みたいな音……」

「小声でも聞こえるものは聞こえるよ」

「それか尻餅をついたサラのふともも!」

「叫べとは言ってないよ」


 笑顔でカルタを出してきた姉が6連勝した。


「くぅ……ん……」

「……」

「zzzzz」

「犬が歩いて……こr」

「すってんころりん」

「どうして」


 真顔でじゃんけんを始めた妹が10連敗した。


「ふてねする」

「お姉ちゃんを置いてかないでよぉ」

「むんっ!」

「ぉぬ~」


 スノザートを引き摺り、サラークは半泣きで横になった。




 寝息を立て始めたサラーク。寄り添うようにスノザートが腕を枕に貸している。


 背中から3対の腕が生える。


 優しく腕に包まれたサラークは呼吸、脈動、そして記録と同期含め全ての活動を停止した。


 コアが動く。新規プログラムと想いの並列化が開始し、本体の更新が始まった。


 月に1度、深い眠りに誘われた後。幸福の思索提起は己を改めて使命を進める。



 心を開け。真っ直ぐに折れ曲がる。

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