デュアルシスターと迷子



「サラ、そっちは?」

「いないみたい。ご近所さん達も見てないって言ってる。……何処に行っちゃったんだろう……」

「サラのスカートはまだ調べて」

「あっちを!調べて!」

「はぁーい」


 サンノミヤ孤児院では、現在迷子の捜索を行っている。姉妹が聞き込み歩きキョロキョロ見回し続けて2時間、未だに迷子は見付かっていない。


「うーん……あっちかなぁ」


 サラークは勘を頼りに走る。


「あそことか?……あらやだカマキリさん」


 スノザートは寄り道をしつつ歩く。



 そしてまた邂逅する。


「サラぁ~みてみて~こんなに貰った」

「お姉ちゃん!!!!!!!(憤慨)」

「あと子供を見かけたって言ってたの」

「お姉ちゃん!!!!!!!(感涙)」


 両手に大きな大根の入った袋を持つ姉がよたよたと歩む。手を貸そうとして受け取って抱えると膝がガクガクと震えた。


「おもぐながっだの?」

「??????」


 どうやら気にしていなかったらしい。無理なのでクーリングオフすると軽々とではないもののえっちらおっちら歩いていった。動くことがあっても働くことはほぼない姉にしてはパワーがある。

 一先ず孤児院に帰って置いておく。



「じゃああっちに行くから!」

「向こう行くねぇ」


 真逆の方向に進む姉妹。





「「……」」


 5分で再会する。


 流石にこれは何かある。もしかして……


「迷子はサラなのね」

「ぽぁ!?!?!?」


 そういうことなら話は付く。なぁんだそういうことか。おててを繋いで帰りましょうね。


「わたしまいごちがう!!!!!!」

「はいはい、サラは可愛いんだから」


 渋々手を繋いで帰るサラーク。ルンルンと歩く姉に乗せられてちょっとスキップをしてしまう。そしておちょくられて朱染めされた。



 孤児院前に戻ると、ご近所さんに手を繋がれている子供が見えた。これを見越していたのかと妹が見てくるのでふんぞり返ってやった。扱いやすい妹でとても助かる。


「あ!スノお姉ちゃんだ!サラーク=トリルティアラもいる!」

「どうして」


 子供からフルネームで呼ばれている妹が目から涙をダーーーーっと溢す。それでも首を振って抱き上げた。


「もう、何処行ってたのよ!」

「えへへ、ちょうちょ追いかけてた」


 無くはないかもしれない壁に抱きしめ、無事を喜ぶ妹は本当に安堵している。保護してくれていたご近所さんにはきちんとお礼を言っておいた。それにしてもサラは本当に迷子だなぁとよく分からない考えを巡らせつつ、手を引いて孤児院へ戻る。




 想いはヒトを繋ぐ。サラークは演算をして位置を割り出し、直感を使って迷子を探していた。だが演算機能は未だ不完全であり、無意識に姉を頼っていた。


 子供達の匂いを全て把握しているスノザートは嗅覚で迷子を探し、安全を即座に理解した為にのんびりと歩いていた。本人は大丈夫だろうという勘と判断していたが、それは勘ではなかった。


 それは暴威。


 集合意識から産まれた応答物。


 多腕なるもの。


 嘆きに手を貸すもの。


 数多の救済。




 聖母は今日も伏して眠る。

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