戦士

 道場を後にした俺は通路の端に寄り、端末を操作する。


 現在の時刻は現実リアルの時間で、0時7分。一応、ライブオンライン内の世界でのこよみと時間も存在はしているのだが、ややこしくなるので多くのプレイヤーは現実の時間を用いていた。


 約束の時間までは3分……つまり、こっちの世界だと9分か。


 ステータスを確認する余裕はあるな。


 俺は端末を操作し、ステータスを確認した。


 名前  アオイ

 ライフ ☆☆☆

 ランク ペーパー

 レベル 10

 クラス 戦士

 HP  100/100 

 STR 58(+2)

 MAG 10

 VIT 23

 AGI 19

 DEX 28

 MEN 21(+2)


 ATK 88

 DEF 72 


 スキル 千姿万態(1)

     刀術(3)

     →青龍の型

     →鳳凰の型

     →雷閃

     →玄武の型

     →居合

     体術(2)

     →連撃

     →ステップ

     採掘

     切り払い


 所持金 1,860G


 装備品 右手  千姿万態

     左手

     頭   鉄の額当て+2

     体   鉄の胸当て+2

     腕   鉄の籠手+2

     足   獣皮のレガース+2

     装飾品


 STRが大幅に上がっており、VITも上がっている。……ん? MAGは下がってるのか。


 ――!


 成長率◎のSTRと◯のVITが上がっていて、✕のMAGは下がるってことか。んで、△と▲は共に変わらず……と。


 この5日間、何度も何度もメティに基本職の成長率を確認したし、現実リアルで所有しているスマホのメモアプリにも、各基本職の情報は入力してある。


 今の俺は基本職の情報を完璧に暗記していた。


 確か……ノービスの頃の俺のステータスは装備の補正を除くと……STR37、MAG12、VIT19、AGI19、DEX28、MEN19だった。


 ってことは……STRが+19? 中途半端な数値だな? 

装備の補正値を抜いた56を37で割ると……1.5135……37に1.5を掛けると55.5。四捨五入すると……56。ステータスの計算式はこんな感じか?


 同じ感じで計算すると……VITは1.2倍。MAGは0.8倍。んで、四捨五入ってところか。


 なるほどね。基本職からは、クラスに応じてステータスの差が激しくなる仕様か。


 この計算式は世話になってる攻略wikiにでも書き込んでおくか。


 しかし、それにしても……我ながらめちゃめちゃ脳筋なステータスだ。


 そして、刀術の熟練度はいつ4に成長するのだろうか。熟練度が最後に成長したのは5日前だ。


 3まではサクサク上がったのになぁ……。この調子だと、熟練度が5に成長するのはかなり先になりそうだ。


 さてと、時間は……やば!


 時間を確認した俺は、慌てて走り出すのであった。



  ◆



「ごめん!」


 俺は守護者協会のカウンター近くで雑談しているカリンとミランの姿を確認すると、ダッシュで駆け寄り頭を下げた。


「大丈夫ですよー」

「アオイ、遅刻だね」


 時刻は0:13。体感的にはカリンとミランを10分近く待たせたことになる。


「本当にすまん……。で、2人ともクラスアップは出来たのか?」

「はい! 無事、巫女になれました!」

「お! 巫女にしたんだ」


 カリンは直前までクラスアップ先を狩人か巫女で悩んでいた。


「友人に相談したら、パーテーバランスを考えると私は巫女のほうがいいと言われたので、巫女にしました」

「パーテーバランス?」

「友人曰く、アオイ君はアタッカーで、その友人もアタッカーらしく、狩人を選ぶと私もアタッカーになっちゃうので、バッファーになれそうな巫女のほうがいいんじゃないか……と言われました」

「ほぉ」


 その友人の中では、カリンのみならず俺とも一緒にパーティーを組む未来予想図があるようだ。


 虎太郎トラもアタッカーだろうな……。


 カリンとその友人、それにトラの4人でパーティーを組んだら、アタッカー3にバッファー1か……どちらにせよ、バランス悪いな。


 俺は訪れるのかどうかわからない未来を想像し、苦笑する。


「うちも鍛冶師になれたよー。強化の上限が上がったから、今度防具一式持ってきてね」

「ほぉ。ちなみに、いくつまで強化出来るんだ?」

「+5だね。+4以降の必要素材はまだ不明だけどね」

「今日はもう遅いから、明日にでも頼むよ」

「あいよ……あ! そういえば、要検証だけど、産業革命起きるかも?」

「産業革命?」

「にしし、今言って間違えてたら恥ずかしいから、詳細はうちが検証した後ね!」

「んー、了解」


 ミランのいう産業革命という言葉は気になるが……そんなことより、防具が強化されるのは本当に有り難い。


 しかし、+5まで強化が可能になるのか……。そろそろ、市場に出回る武器の攻撃力が【千姿万態】の攻撃力を超えんじゃないか?


 今のところコイツは攻撃力の高い刀というだけだ。強いて言えば、クラスを問わず刀を得意武器とする……というパッシブスキルが備わっているくらいか?


 なんか……こうもっと……これぞ祝福ギフト! みたいな特殊能力はないのかね?


 まぁ、レベルが存在する以上……レベルが上がれば攻撃力は上がるんだろうけど……お前はひょっとしてハズレ祝福ギフトなのか?


 深く考えるのはやめよう……レベルが上がったら大化けする可能性もあるだろうし……。


 とりあえず、ここに来た目的を終わらせるか。


「2人はもうクエスト達成を報告したのか?」

「まだですー」

「カリンがぶーぶー言うから、アオイを待ってたよ」

「それはすまなかった。とりあえず、報告しようか」

「はい!」

「あいあい」


 しかし、いつ来ても長蛇の列だな。


 端末を使えば並ばなくてもクエストの受理と報告は出来るのに、なんで並ぶかね?


 守護者協会へと到着した俺は長蛇の列を横目に端末を操作。クエストアプリから『初心者クエストⅤ』の達成を報告した。


(マスター、クエスト達成おめでとうございます。報酬は2,000Gとなります。今回のクエストを達成したことにより、新たなクエストが解放されました)


 端末を操作し、クエスト一覧を確認すると新たなクエスト――『守護者とは』が出現した。


 ――?


『初心者クエストⅥ』じゃないのか。


 新たに出現したクエストは俺の予想を裏切るのであった。

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