守護者とは

『初心者クエストⅥ』じゃないのか。


 ボス的なモンスターを討伐したり、ダンジョンの奥にある証っぽいアイテムを入手したら卒業……とかじゃなく、ノービスを卒業したから初心者卒業?


 とりあえず、クエスト内容を確認するか。


『守護者協会の主催する講習にご参加下さい。講習は90分ごとに開催しております。受講を希望する場合は、クエストカウンターにお越し下さいませ』


 ……なるほどね。


 長蛇の列が出来ていた理由を知った俺は、長く並ぶ列の最後尾へと向かうのであった。


 長蛇の列に並ぶこと30分。


「お待たせしました。守護者協会カナザワシティ支部へようこそ! 本日はどのようなご用件でしょうか?」

「講習に参加したいのだが……」

「かしこまりました! それでは、守護者様の進捗を確認致します。こちらの装置に端末をかざして下さい」


 俺は受付カウンターに設置してあった四角い箱のような機械に端末をかざした。


「……アオイ様、ありがとうございます! アオイ様が受講する講習は攻略講習となります。15分後に講習は開始いたします。こちらの奥の部屋にお進み下さい」


 受付職員に案内された部屋には椅子がズラッと並べられており、100人ほどのプレイヤーたちが並べられた椅子に座っていた。


 キャパシティ的には200人くらいか?


 空いている椅子に座ると、しばらくして横の椅子にカリンが座ってきた。


「ミランは?」

「ミランちゃんが受講するのは別の講習みたいです」

「そうなんだ」


 戦闘系と生産系で受講する講義が違うのか?


「それにしても、凄いですね。こんなイベントもあるんですねー」

「これはイベントなのか……? まぁ、俺も色んなゲームをしてきたけど、こんな形の講習を受けるのは初めてだな」


 イベントの一環として定時に歌唱ライブを実施するオンラインゲームのイベントを経験したことはあったが、講習は初だ。


 その後も他愛もない雑談をカリンと交わしていると、


「定刻となりました。これより、攻略講習を開始します」


 凛とした女性の声が部屋の中に響き渡った。


 視線を前に向ければ、用意されていた壇上に眼鏡をかけた秘書っぽい感じのするスーツ姿の女性が立っていた。


「改めまして、こんにちは。私は守護者協会カナザワシティ支部の支部長――サクヤと申します。ここにお集まりの守護者様は皆初心者クエストⅤをクリアした者たちです。初心者クエストⅥを発行する前に今一度皆さまの御立場と役割をご理解頂くことが、今回の講習の趣旨となります」


 初心者クエストⅥはあるのか……。


 ってか、俺たちの御立場と役割? βテスターとしての立場と役割――デバッカーやプレイしての感想を求められるとかか?


「皆さまは、何故守護者・・・様と呼ばれるかご存知ですか?」


 ――?


 フィールドに跋扈ばっこするモンスターを退治して、この街を守っているから?


 ライブオンラインはオンラインゲームである以上、勇者・・という特別な存在は許されない。プレイヤーは皆平等でなくてはならない。


 そうなると、俺たちの肩書は冒険者、或いはハンターといったところか? そのどれもしっくり来ないから守護者とか?


「答えは皆さまはこの世界を守護する存在だからです」


 おぉ……めっちゃシンプルな答えだ。


「では、皆さまは誰からこの世界を守護するのでしょうか?」


 モンスター?


「――異世界からです!」


 は?


 周囲のプレイヤーがざわつき始める。


「この世界は八百万やおろず――つまり数多の神々に愛されし活力溢れた神聖なる大地! 故に、多くの異世界の覇者たちはこの世界を狙っており、すでに浸蝕しんしょくを始めております!」


 八百万の神ってことは、やはり舞台は日本か。


「そこで守護者たる皆さまには異世界からの浸蝕を防ぎ、この世界を護って頂きます!」


 女性――サクヤの言葉は熱を帯び始める。


「では、具体的にどのようにして護るのか? ここにお集まりの皆さまにはダンジョンを攻略し、ダンジョンコアを破壊することでこの世界を護って頂きます」


 この世界を護るためにダンジョンを攻略……? 殺られる前に殺れ! 的な?


 その後も続くサクヤ氏の言葉をまとめると、


① この世界は、生態の異なる8つの異世界から浸蝕を受けている


② 現在、各シティごとの領域(=市町村)にダンジョンが1つ存在している


③ ダンジョンは同じ入口から侵入しても、繋がる先は同じ場所とは限らない


④ パーティーを組んでいれば、同じ場所に出ることができる


 ③と④の仕様は……インスタンスダンジョンか?


⑤ ダンジョンコアは3時間に1つ生成される


⑥ ダンジョンコアの数が240を超えると、新たなダンジョンが出現する


⑦ ダンジョンの数が増加すると、異世界の力が強まる


 異世界の力が強まると、フィールドに出現する敵が強くなる?


⑧ 領域内にダンジョンが7つ存在すると、シティは加護を失う


 領域の範囲=市町村の区画?


⑨ 加護を失ったシティはモンスターに侵入される


 加護を失ったシティの領域でログアウトすると、死を重ねるらしい(=スリーアウトでアカウント消滅)


⑩ 加護を失ったシティは異世界の領土となり、定期的にスタンピードを発生させる


 スタンピードの詳細は別日程の講習で説明するとのことだ。


 その他に気になった情報としては、ドロップ品だろうか。ダンジョン内には異世界産の装備品を落ちているようだ。ハクスラとトレハン魂がくすぐられる。


「――というわけで、当支部の領域内にあるダンジョンを位置情報を皆さまの端末に送信しました! この国を護るためにも、この場にいる守護者の皆さまは、張り切ってダンジョンコアの破壊に努めて下さい!」


(マスター、クエスト達成おめでとうございます。報酬は帰還石となります。今回のクエストを達成したことにより、新たなクエストが解放されました)


 端末を操作し確認すると、予想通り『初心者クエストⅥ』が生成されていたのであった。



☆★☆あとがき★☆★


本年はお世話になりました!

来年もよろしくお願い致しますm(_ _)m


来年も、読者の皆さまにとって良い年になりますように……!


ガチャ空

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