お誘いを断る作法

 清少納言は歌の名家清原家の出身であるが、父元輔のあまりの巧さに

「こんにゃのと比べられたら、わたしがバカみたいにゃ」

と、自らは歌をほぼ止めてしまった。


 ある日の朝、藤原行成というものがやってきて言うには

「お話したいから、鶏の声に促されて、来ちゃったにゃ」

とのことなので、清少納言は

「それは孟嘗君の鶏鳴狗盗のマネかにゃ?」

と、返すと、行成はさらに

「ははは、貴女とわたしの逢坂の関ってヤツにゃ」

と、たわけたことを言うので清少納言は

「夜も明けないうちに、鶏鳴狗盗の故事みたいにゃことしても、わたしの逢坂の関はダメにゃ」

と、誓いを破って歌った。行成は歌を返す。

「貴女の関は誰でも通れるから、鶏がにゃかにゃくても通れると聞くにゃ」

 あまりの返歌に、清少納言は行成の頭をわざわざ叩いて

「痛たにゃあ!」

と、悶えてる行成を横目に部屋に帰っていった。

 こんな2匹だが、あんがい仲良しであったという。

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