夏の夜に

 清原深養父は清原元輔の祖父で清少納言の曽祖父である。身分こそ低かったが、琴の名手として宮中で知られていた。

 ある日の夜、かれは

「お月さんがキレイだにゃあ」

と、うたた寝をしながら、月を眺めていた。

 気がついたら、夜は明けたが、月はまだ見えている。

 深養父は

「わあ、夏夜は短いから、もう宵と思ってる内に明けちゃったけど、沈みそびれた月は、雲のどこに宿ってるをだろうにゃあ」

と、歌いながら、感慨に耽った。

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