教えてよ、帝王

 私がふりかえると、ララちゃんときょうだいちゃんたちはずっと手をふっていた。私は両手をぶんぶんふりかえす。


「とってもいい子たちだったね」


 となりのアオバの言葉に、私は大きくうなずいた。


 みんな、とてもピュアで元気な子たちだった。ララちゃんなんて私よりも小さいのに、家族を支えるお姉ちゃんとして、ずっとたくましい。


 だから、私にはわからない。


「あの子たちが苦しむ理由は、なに?」


 思わず、私は口に出していた。言葉にすると、ふつふつと怒りがわいてきた。


「お父さんとお母さんと、きょうだいみんなで暮らす。それだけのことのはずなのに……」


 あの子たちは、家族みんなで過ごすという幸せを奪われている。そんなの、おかしい。


 アオバは、山の上にそびえ立つお城をにらんでいる。


「この状況を作りだしている元凶は、まちがいなく帝王だ」


 悪の帝王は、アオバたちリーフェスタ王国だけの敵じゃない。ララちゃんたちのようなコカゲ帝国に暮らす子どもたちにとっても、親を奪い、国をあらす存在なんだ。


 アオバが、私の目をまっすぐ見てくる。


「ボクはやっぱり、コカゲ帝国を救いたい。だから……メイ」


 ひとつ息を吸って、アオバははっきりと言う。


「帝王の城に、乗りこもう」


 悪の帝王に、会いにいく。


 それがどんなにキケンなことなのか、私でもわかる。


 帝国の兵士に見つからずにいられるのか? もしとらえられたら、どうなってしまうのか? 帝王の元にたどり着いたとして、話が通じるのか?


 不安や心配ごとは次から次へと生まれてくる。


 でも、私はアオバに答える。……強気に、笑いながら。


「それ、私が先に言おうと思ってた!」


 教えてよ、帝王。あなたに、ララちゃんたちを苦しめる権利があるの?

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