# 4 異常事態 ⑬
虚ろな瞳は何を見据えているのだろうか。
不自然なまでに直立不動を決め込んだままの
答えの出ない疑問ばかりが脳内を往復し続ける。
留まる理由として考えられるのは捕食だ。拠点には二十を超える団員やハンターの遺体が放置されたまま残っている。あの場で遺体を抱えて逃げるなんて出来はしなかったので、いた仕方ないことではある。
捕食されていれば、その隙を突ける。遺体を連れ帰れないのであれば、捕食された遺体に意味を見出すことだけが唯一の救いとでも言うか。おれはそんな考えを持つが、どちらにしろ遺体となった者をどうしたいと思うのは生きている側の自己満足に過ぎない。意味を見出されたところで死した者が蘇るわけじゃない。遺体がどうなろうが、遺体となった本人には関係の無いことなのかもしれない。何か思う事も話す事も出来はしないのだから。
「あいつと戦う時、ここから少し遠ざけて。探したい物があるんだ」
「うん。わかった」
短く返すメリィは躊躇いも迷いも感じていない。この場合、今だけでなく、これまでの全てにおいてだ。
鞘を捨て置いたまま、一度走って逃げてきたのでメリィの持つ大太刀は抜き身の刀身を見せている。数多の魔物を屠ってきた大太刀は、とある国で作られた名刀らしい。
そんなものを何故、メリィが持っているのか聞かれても、家にあったからとしか答えられない。
直立不動の
地面すれすれを行く大太刀の切っ先は触れた草木を容易く切断する。メリィは歩いているだけで、切れ味の良さが垣間見える。
真っ黒で虚ろだった瞳に変化が生じたのは、
途端、巻き起こったのは
生き物が咆哮する理由として、真っ先に思い浮かぶのは威嚇だ。相手を怯ませるような咆哮を上げることで、事を穏便に済ませる。なんて言う考えは人間過ぎるか。大抵の生き物は咆哮に続いて襲い掛かってくるものだ。
しかし、今の場合で言えば、立場が反転していた。空を割るような咆哮の末、駆け出したのはメリィが先だった。
踏みしめた地面が割れ、加速を持ってして肉薄する。
伸び縮みすることは既に知っていたことで、腕の触手を鞭のように振るって攻撃を放っていた。しかし、今回のは射出されたと表現する方が適切だった。
一瞬でぶつかり合うメリィと触手だが、鬩ぎ合い拮抗するわけもなく、メリィの加速は止まらなかった。
触手の破片が四方八方に飛び散る。
伸びた触手を真正面から受けたにも関わらず、メリィは大太刀を器用に回し、縦横斜めと縦横無尽に切り飛ばす。その間にも、
あっという間に腕は短くなり、ということはメリィが
しかし、そんなことでメリィからの追随を躱すことは叶わない。
小さな起爆音とともに飛び退いた
驚異というか、もはや異次元レベルの再生能力で
それでも、メリィは空中で身体を捻り、
しかし、今回は木々にぶつかることなく数十メートルほど吹き飛び、地面を抉りながら停止した。
まだ、全然生きてはいるだろうが、あの
そして言われた通りにメリィは
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