いつかこういう日が

 何も進展のないわかれをして、彼がトルコに行ってから3ヶ月が経っていた。


私の体にある異変が起こっている。

病院で検査をする。

どうしていいものか?

でも、答えは出ている。



 そんなある日、仕事終わりに帰宅して、ネットニュースを見ると、


『トルコで大地震。死者は1万人以上』


というニュースが出ている。


あれ!

彼、今どこにいるんだった?

あんな風にわかれたものの、気になったのでメールを入れてみる。


「トルコで地震があった。これから、現地のコーディネーターを探して合流する予定」


と返事が返ってきた。


「気をつけて!」


そんな簡単な返信をした事を後悔することになる。


テレビやネットでニュースはチェックするものの、現地に入るのは難しく、詳しいことはまだわからない。

そんなことばかりだ。



 大地震から数日後、彼のお母さんから電話があった。



「あの子が、トルコで行方不明だっていう連絡が来たの?なにか聞いていない?」



彼のお母さんの声は震えている。



ついに来たか、この時が。

いつかこういう日が来ることを、私はなんとなくわかっていた。

意外と冷静に受け止めた。



「連絡があった時に動けやすいように、東京に行こうと思っているの」


そう言って、彼のお母さんは、翌日私の家に来ることになった。


 彼のお母さんとも、もう10年近い付き合いなので、年末年始を一緒に過ごしたり、彼抜きで会ったりする仲だった。

気さくで元気のいい逞しい人だ。

そのお母さんの声が震えていた。


私は、冷静さを保とうと決意した。


 翌日、彼のお母さんが来た。

ここに泊まると、あなたの迷惑になるからと、姪っ子でミュージシャンの直ちゃんの会社のマンションに泊まるという。

すぐ近くだ。


 日本大使館、トルコ大使館、ボランティア仲間達と連絡を取り合う為、英語のわかる私が窓口になった。


私は仕事を休み、日中は彼のお母さんと連絡を待った。


 私は、すっかり忘れていた。


お母さんが料理をしてくれているその匂いに、胸がムカムカして、トイレに駆け込み吐いてしまった。

そんな私を見て、お母さんが、


「もしかして、妊娠してるの?」

「あの子の子供?」


「他に覚えがないので、たぶんそうです。」

「もうすぐ妊娠4ヶ月になります。」


「どうするの?っていうのも変だけど」

「正直生きて返ってくる保証もないのよ」


「産みます!」

「たとえ、ひとりでも」


「よっしゃ!協力するわ!」












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