第3話 自分の記憶力に自信を持つな!

入社当時のノートが出てきた。

先輩が話す内容を必死でメモり(かろうじて読めるくらいの字...)、家に帰ってまとめていた。


中途採用で新人が入ってきた。

30歳ジャスト。幸来(サラ)より1つ下だ。


「森山さん、今日からよろしくお願いします。名字がたぶってるから、私は下の名前で呼ばれてます。」と名札を見せながら軽く挨拶をする。


「幸来さんですね。よろしくお願いします。」


「まずは、基本的な朝の流れを説明しますね。」

と、出勤してから毎朝1時間くらいのルーティーンとなるであろう業務を説明する。


(気になる...)

最近の新入社員に多いこと。


「森山さん、メモ取らなくて大丈夫?」

「あっ!紙もらえますか?」


(いや、持ってないパターン...)


「再利用の紙でいいかな?」

と言って、コピーミスの紙が貯めてあるところから1枚渡す。(どこも経費削減で再利用だ...)


メモが取れるように少しずつ、間を長くおいて説明をする。ルーティーンの説明が終わったところで私は会議となりバトンタッチだ。

そのままなんだかんだ話せず翌日...


「朝、この準備からするんたけど昨日聞いた?」

と同僚の声。

「いえ、初めてです!」


(ん?今のは森山さんの声な気がしなくもない.?.いや、まさか...昨日教えてるし...)


恐る恐る覗いてみると、目をキラキラさせて昨日と同じ話を聞いている森山が居た。

手元を見ると

(メモしないんかい!)


思わず呼び止める。

「メモ取らなくていいの?いざ、聞きたいときに皆対応中だったら頼れるのは自分のメモだけよ?自分を守るためにメモ取ってた方がいいと思うけど... 」


「そうですね!何か紙ありますか?」

(いや、メモ帳!!!!!)


きっと、昨日メモした紙は行方知れずになっているのだろう...


森山への説明が終わった50代の先輩がやって来た。

「ダメだ。メモ取らない。ゆとりか?」


「いや、世代のせいにするのやめてくださいよ。私と1個しか変わらないんですよ!」


「えー!!!!!あの子20代前半くらいだと思ってた...」



(...)


普段老けて見られるのも嫌だが、

こんな感じで若く見られるのも嫌なもんだとつくづく思った。


またつぎの日。

「幸来さんすみません。これどーするんですか?初めてで...」と森山が聞いてきた。

それは、一昨日、昨日説明を受けていたところ。

そして、私にメモを取るよう促されてメモしてたところだ。


若干意地悪かとも思ったが

ここは心を鬼にして

「昨日メモしてたよ?せっかく書いたんだから1回それ見てみようか。それでも分からなかったらもう1回教えるね。」


さて、

そもそもメモがきちんと見つかったのか。。。


それは、私がチョコレートを食べまくって

口のなかが甘々になったことから想像してほしい...

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