第6話 やっかいものあらわる

有栖川ありすがわ先生」


 上級生の青年が、そんなふうにつぶやいた。

 いきなりあらわれた女性は、有栖川先生というらしい。教員だ。


「話は聞かせてもらったわ。模擬試合がしたいって?」


「いや、僕は別に、これっぽっちも……」


「新入生、元気があって大いによろしい。認めます。私が立会人になりましょう。さあグラウンドへどうぞ」


 こいつ、人の話を聞かねえやつだな!?


「しかし有栖川先生……」


「いいのよ同好会長。血気盛んな若者には息抜きと血抜きが必要なのだわ」


「わあっ、ありがとうございます! 先生!」


「ついでにこちらの届にもサインをよろしくね。私、同好会の顧問だから」


「はい、はい! わかりました!」


 ついでに同好会に入会させられている女の子……

 こいつ天然だなあ。それもかなり抜けてるタイプの天然さんだ。

 なしくずしに模擬試合をさせられそうな僕は、正直いい気分がしない。


「無駄なことをやっていますなあ、有栖川先生」


 と、たっぷり白ヒゲをたくわえた、偉そうなジジイがあらわれた。

 なんだこいつ? 考えてから、入学式の壇上を思い出すと、学園長だと気づく。


「勝負なら、魔法剣士特待生のレベル8とやってみては、いかがですかな?」

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