第7話 無駄じゃない

「お言葉ですが学園長……生徒同士の研鑽は公に認められていますので」


「無駄を無駄と言ってなにが悪いのですかな? 優秀で意欲のある生徒に期待をかけて、魔法剣士として成長をうながすのが、教員の役目でしょうに。やる気のない生徒は見ればわかるでしょう?」


 学園長が僕を見て、鼻で笑った。あざ笑われているのだと、よくわかる。

 学園長のとなりには、新入生とおぼしき別クラスの少年が立っていた。


 話の流れから察するに、彼が魔法能力レベル8を持つ特待生なのかな?

 魔法剣士の能力は、0~9までの10段階評価に分かれている。

 レベル8となれば、最上位クラスの魔法能力者ということだ。


 ほーん、すごいねえ。学園長の肝入りってのは、さぞかし気分がいいだろう。

 僕と視線を合わせた少年は、ひかえめに、そして傲慢に口元を歪めた。


「模擬試合なら俺が代わるよ。やる気が無いなら、勝負なんてしない方がいい」


 うわあ、腹が立つなあ、魔法能力なんてのは、しょせん天から与えられた才能で、スポーツや学業とは違って、本人の努力や研鑽とはなんの関係もないしろものだ。

 そんなやつに限って、お優しい天からの贈り物を、自分の能力だと本気で勘違いしているのだからおもしろくない。こいつがまさに、そんな印象ストライクど真ん中だ。


 ひかえめに言ってウザい。よっしゃ、潰すかー!

 やる気も誠実さもない僕だけど、おまえとなら模擬試合をしたいと思うよ!

 僕が不誠実に半笑って進み出ようとした、そのときに、しかし……


「訂正してください。私たちの勝負は無駄ではないし、代わりなんて必要ない」


 女の子が氷のように冷たい声音で言った。

 ずっと笑顔だった彼女が、今は笑いもしない真顔で告げる。


「あなたに決闘を申し込みます。学園長には、立会人をよろしくお願いします」


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