第3話 ぼっちですよね?

「おひとりさまですよね?」


 学校の玄関を出る時、後ろから声をかけられた。

 僕は聞こえないふりをした。

 帰宅部志望の僕は、このまままっすぐ帰宅するのだ!


「おひとりさまとお見受けしました。部活の勧誘に流されず、お連れさまもいない、とりあえず帰宅するだけ……お暇ですよね? 今、お時間がありますよね?」


「僕がぼっちだと言いたいのかテメー」


「ええっ!? 違うんですか!?」


 ……そんな全力でおどろくなよ。傷つくじゃないか。

 じゃなかった! 勢いで答えてしまった! 失敗だ!


「やっぱりぼっちなんですね! ああ、よかった!」


「よくねえよ! やかましいわ! ほっとけ!」


 僕が振り向き、文句を言うと、花咲くような明るい笑顔が見えた。

 先ほど、ホームルームで剣を抜き放った女の子だった。

 長い髪を後ろで束ねているだけなのに、見た目小奇麗なのは努力か天然か。


 斜め上な性格をしているように思うのは、僕の気のせいではないだろう。


「お暇なら、剣の手合わせはいかがですか? グラウンドが空いてますよ」


 ご飯でもいかがですか? みたいなノリで果し合いに誘われてしまった。

 とても困る。断る以外の選択肢がないと、わからないものだろうか?


 僕が返答に困って立ち止まっていると、彼女はますます笑顔になった。

 そこで天の助けだ。上級生が、部活動の勧誘にやってきたのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る