第2話 海野祭【ウミノマツリ】

 海野祭うみのまつり、僕の名前だ。

 海野が姓で、祭が名前だ。


 僕が道場破りみたいな女の子にからまれたことには、理由がある。

 それは入学式の後だった。

 クラスのホームルーム、自己紹介での出来事だ。


「私には夢があります。日本を出て、世界最高の魔法剣士になることです」


 明るい声で、まっすぐな目をした女の子が言った。

 世界制覇ね、魔法剣士の世界大会に優勝したいという話かな?

 ここまではいい。

 ここは魔法学園だから、夢を持つやつもいるだろうという話だ。


 問題はここから……彼女は意気揚々と教室で剣を抜いたのだ!


「みなさん切磋琢磨しましょう。さっそく私と剣の手合わせを願います!」


 なに考えてんだ、この女!? クレイジー!?

 ――入学早々、クラス全員の意識がひとつになった瞬間だった。


 まあクレイジーか、ルナティックかはさておくとして……

 あたりまえだが、彼女の挑戦を受ける者は誰もいなかった。

 男子は冷めたまなざしを向けて、女子は遠巻きに笑っている。

 もちろん、僕も反応も大勢のそれと同じだ。

 個性は大切にすればいいけれど、他人と足並みをそろえて損はない。


 入学早々、高校デビューに大失敗した魔法剣士の女の子。

 彼女と関わり合いになりたい者は誰もいないだろう。

 僕もそうだ……そのはずだった、というべきか。


 ホームルームの後は、上級生による部活動の勧誘がはじまる。

 安穏とした下校時間に、しかし……僕の後ろをついてくる人がいたのだ。

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