第11話「……俺と、ヤリたいのか?」

 すっかり日は落ちたのに、障子の外は妖怪が持ってきたであろう松明で明るかった。この時間になっても申助の姿を一目見ようと妖怪が入れ替わり立ち替わり集まっているらしい。当主である戌太郎達も一言言って追い払ってくれればいいのに、仕事で忙しいのか姿を見せる事はなかった。彼を呼ばなけれないけないはずのキヌが番をしているから、そもそも連絡が行っていないのかもしれない。


「お待ちしておりましたよ!」


 キヌの甲高い声がする。戌二が帰ってきたのだと思い、申助は布団から顔を出した。下半身は彼を求めて疼いている。

 シャ、と音がして障子が開き、戌二が部屋の中に入ってきた。


「い……ぬじぃ……」


 涙目で見上げた彼は目を丸くして申助を凝視していた。布団から出ると這って彼の方へと行く。

 彼は弾かれたように障子を閉めた。


「キヌ! すぐに出るから、食事の用意をしろ!」


 後ろに向かって呼びかけながら彼は申助の着乱れた襦袢を直す。


「おれ……、も、まてねぇ……」


 申助は戌二の手に掴まるが、戌二は申助に更に単衣を着せると持って帰ってきた風呂敷に手ぬぐいや襦袢を入れ始めた。

 早く自分に構ってほしい。

 申助は戌二にまとわりついて彼を誘惑しようとしたが、俵抱きにされてしまった。


「戌二様、お食事です!」


 キヌが入ってくる。手には風呂敷包みを持っていた。戌二は受け取ると障子を開く。

 どさ、と使いの妖怪たちがなだれ落ちてきた。

 こんなにいたのか、と申助は家鳴りや垢舐めといった妖怪を眺める。彼らは目をらんらんと血走らせていた。


「あれが猿神族の……」


「なんともまぁ、甘い香りじゃ……」


「俺の嫁をそんな目で見るな!」


 戌二が彼らに向かって吠える。十二番目の子供とはいえ主の威嚇に妖怪たちは驚いて後ずさった。ひぇ、と四方八方へと散っていく。キヌでさえ驚いて腰を抜かしているようだった。

 戌二はそのまま門へ向かって走っていく。


「食べ物、持っとけ」


 肩で揺られている申助に戌二はキヌから預かった食事を渡す。受け取ると彼は狼の姿に転変した。

 犬神族である戌二は狼の姿になれるのだ。当然申助も猿に化けられる。獣の姿になると、身体能力が獣のものになるので戌二は転変することでより早く走れるようになった。


「うわっ、おい」


 振り落とされないように必死に申助はしがみつく。彼は元々持っていた方の風呂敷包みを咥え、背中に申助を乗せてどこかへ向かって走っていた。門を抜け、坂を上り、下りる。目を瞑っているとあっという間に到着したようで戌二の足の速度が下がった。


 何段かの石段をかけあがり、たどり着いた先は小さな神社だった。鳥居をくぐると小堂があり、正面に賽銭箱が置かれ、古い鈴が吊り下げられている。

 小堂の木戸を開くと、四畳半ほどの大きさの板間が出現した。板間には布団と燭台しかなく、天井も低く閉塞感のある場所だった。


「……悪い。頑張って探したけど、ここしか見つからなかった」


 布団に申助を下ろし、戌二は再び人間の姿に戻る。着ていた衣服は獣の姿になった際に落としてきたので戌二は風呂敷包みから着流しを取り出し身に纏った。 


「この部屋、用意してたのかよ」


 申助は周囲を見渡す。埃っぽくはなく、きちんと掃除がなされていた。


「ほかの所は兄の嫁や姉が使うって言うから、必死で探した。でも、使われていない犬神の神社はあまりなかった。久しぶりに行ったら稲荷の神社になっていた所もあった」


 しゅん、と戌二の耳が垂れ下がる。


「いや……。用意してくれただけでも嬉しい」


 じり、じりと申助は戌二に近寄る。彼の袖を引いて、布団の上に押し倒した。


「……まさか、送り届けて終わりにするってぇんじゃないよな?」


 申助は馬乗りになって着たばかりの戌二の服の袂に手をかける。今日一日の妄想を現実にしたい。


「抱かせてくれよ……。俺、お前の中に入れたくて仕方ねぇんだ」


 単衣を脱ぐ。中からは屹立した自身が姿を表す。先走りでぬるぬるに濡れ、入る先を求め脈打っている。黙って申助を見つめている戌二の喉元に唇を這わす。彼の肌の舌触りはこれまでに抱いたどの猿神よりもきめ細やかだった。


「痛くしねぇからさ」


 手を滑らせる。女神と違って胸はない。戌二は確認するように申助を見上げた。


「……俺と、ヤリたいのか?」


 戌二は申助の肩を掴む。ごくり、と申助の喉が鳴った。


「あぁ。ヤリてぇ。今日一日、お前を抱くのを妄想してココいじってたんだよ」


 申助は自分のモノをこすりながら返す。


「……そうか」


 戌二は目を伏せた。納得してくれたのだろうか。申助は再び愛撫に戻ろうとした時だった。戌二の手が申助の足を掴んだ。


「ぅえ!?」


 べしょり、といきなり足を引かれ、申助の視界が反転する。戌二が覆いかぶさってきた。


「お前、忘れてんだろ。犬神族は相手の発情期にあてられて発情するって……。俺だってお前を抱きたくて仕方ねぇんだよ」


 戌二の瞳が発情により血走っている。嘘だろ、と申助はあんぐりと口を開けた。


「は……!? おい、ふざけんな! 俺が抱く側だろ!? てか、お前が俺相手に萎えずに最後まで出来るわけねぇだろ!?」


「出来るに決まってんだろ。お前、外見だけなら女に見えているんだからな」


 ぐ、と唇を引き結ぶ。確かにそれならば男性を抱くよりは視界がごまかされている分心理的な障害は低い。


「俺の方が慣れてるから!」


「慣れてても、尻の方には入れたことねぇだろ、どうせ」


 図星だった。睨みつけるとほぼ同時に戌二の唇が落ちてくる。申助が口を閉じていても唇を執拗に舐められるものだから文句を言おうと開けたら舌が侵入してきた。


「んっ……、ふぅっ……」


 舌と舌を絡める接吻は申助の好きなものだった。頭がトロン、と溶けていく。初めてと言っていた割には情熱的で、荒いが気持ちよかった。ヌルリとした感触が股間のあたりにした。


「ぅえ!?」


 顔を離し、下を見ると油が塗られている。玉袋の下、尻の穴まで塗り拡げ、戌二の指が穴の縁に触れる。


「ぁ!? おい! 待て……」


「待つわけねぇだろ。いいから観念しろ」


 観念出来るわけがない。第一、戌二の爪を伸ばし放題の指が入ろうものなら内壁を傷つけてしまう。犬神族は総じて爪が硬く長い。痛みに耐えようと目をつむるが、挿入されたという感覚はあるのにこれといった刺激はない。


「お前、爪……」


「切っておいた」


 ゴクリ。喉を鳴らす。彼は最初から抱く気でいたらしい。爪の感触がないということはよほど念入りに爪を切り、削って滑らかにしたのだろう。どんな顔をしてそれをしたのかと思うと顔が熱くなった。自分はそこまで考えられず、ただただ今日を待つだけだったのに。

 こうして申助は戌二にまんまと頂かれ、何度も絶頂を迎えることとなったのだった。




十八歳以上の方で濡れ場が見たい方へ

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