小説はさすがにくるっとしてぽんとは出てこないよねって話

書けない。何を書いてもこれは面白くないんじゃないかという病に罹った。


分かっている。今年は圧倒的にインプットが足りていないということは理解している。圧倒的に読めていないし、映画やドキュメンタリーも例年と比較するに見ることが出来ていない。


自分の中にある物だけで書けるものはきっと書いてしまって、アイデアが枯渇している気がする。というか、アイデア自体は存在するけれど解像度が低いのでそれを言語化するだけのものがきっとないのだ。


理屈は分かっている。


それに今書いているものは、自分の一部を切り売りするような作業でしんどいというのもきっとある。全部が自分というわけではないけれど、私に似た私と違う主人公を動かすのが辛いのだ。


ゆるゆると時間は過ぎていって、今日ももうすぐ終わりに近づいている。弱音はあんまり吐きたくない。でも書けないのだ。書けば浄化されるようだったのに、書いても書いてもずっと苦しい。


きっと書き終えたらこの苦しさから解放されてすとんと気持ちが落ち着くのだろうことも分かっている。この苦しさは一時の物だ。


書くにはそれなりの苦しさがある。私は書いているときの苦しいをすぐ忘れるクセがあるようで、きっとそれは小説現代長編新人賞へ出したときも、小説野性時代新人賞へ出したときもあったのに、覚えているのは楽しかったり、異常に緊張したのが可笑しかったなということばかりなのだ。


今の苦しさもきっと、書き終えてしまえば忘れて楽しかったなと思うはずだ。だったら、とりあえず書いてみるのはいいことなのかもしれない。うん。書こう。そうだ、書こう。


くるっとしてぽんとは出ないから小説を書くのは楽しいのだろう。私はもっと伸びしろあるはず、と言ってみる。

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