病気になる前に戻りたいよねって話

私には持病がある。双極性障害。所謂躁鬱ってやつだ。


病気になる前にもし戻れるなら戻りたい。きっかけは単純に、仲間はずれから始まったんだけれど、その前に戻りたい。そして仲間はずれにされない自分になりたい。なんて、無理ゲーなことを思ったりする。


精神科に初めて行ったのは中学三年の頃。学校の近くにある病院で、家からも通いやすかった。けれど、その病院で私の主治医をしていた先生が他の(といっても系列病院)に行くことになり、私も転院した。次の病院は、学校も遠ければ家からも遠い山の中にある病院で、毎回タクシーを使って通った。


中学三年生のとき、私に似合う言葉は疲弊だった。そんな言葉似合いたくないけれど、そうだったのだから仕方ない。それまでの日々に疲れ切った私は、中三の夏休み前、とうとう保健室登校になる。もう教室に行くのがとてもじゃないけれど耐えられなくて、どうしようもなくて、なんとか音楽の授業だけ音楽室に顔を出す存在。それが私だった。なんで音楽の授業だけ音楽室に行っていたかというと、音楽の授業のとき、支援学級にいた女の子(なぜか私は好かれていた)が迎えに来てくれていたからだ。私も彼女が好きだった。いつも澪ちゃんと笑顔で呼んでくれるところとか、迎えに来て一緒に行こうと誘ってくれるところとか、全部。元気にしているのかな、あの子。


いつも彼女は音楽の授業のとき私の横に座ってくれて、いつもとなりにその子がいるから安心して授業に顔を出せた。今思えば、最初の頃はその子のサポートを担任に頼まれていたのは私だったはずなのに、救われていたのは結局私だったな。


4月。担任から彼女のこと頼むなと頼まれていた。結局のところ私はその役目を果たせなかったし、担任には迷惑をかけただろうと思う。まあ、その担任が結構ヤバいことしていたのを知った今となっては、別にもういっか私がかけた迷惑は。と自分のかけた迷惑は不問にすることにした。


保健室登校を続けた私は、部活での特待生がほぼほぼ決まりかけていたのをふいにした。人生はここら辺から狂ってきた。進学した高校も中退したのは精神的な問題からだ。


私を精神的に追い詰めたのは、周りの人間からのいじめだったりするんだけれど、その中心にいたような人間が、今華やかな場所(華やかに見える場所)にいるというのもなんだか腹立たしい。


私は一生薬を飲み続けなければならないような病気になったのに――。恨み言を言ってもあいつには響かないのを知っている。だから、もう呪いは止めた。私は私の道を進む。


病気になる前に戻れる方法なんてない。もう私は病気を受け入れなければならない段階にいる。一生薬を飲まなければいけなくても、それが偏見というフィルターを通して見られることがあることも全部受け入れて、私はもう進む必要があるのだ。


後ろ向きには生きていけない。私は前を向いて歩いて生きたい。なんだ、前向きじゃんと思うかもしれないけれど、こう思うまでに20年近くの時間を費やした。そろそろ私は怨みつらみを手放したいだけ。ただそれだけだ。許さないけれど、もう恨まない。


私が今こうして書いているのは、これまでの経験があったから。これからは私のしんどさをただ発信するんじゃなくて、誰かを掬い上げるためにパワーを使いたい。恨むんじゃなくて、パワーにする。


でも、病気になる前に戻りたいとは思っちゃうよねってそんな話。

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