第9話 ギルはお金の単位 千ギル=銀貨一枚

「3万ギルでどうだ?」


イノシシみたいな魔物、メッテジを指してバンダナおじさんは俺にそう聞いてきた。

ギルはお金の単位。

3万が適正なのかわからないが、無一文には一円でもありがたい。


「問題ないブヒ!」


「よし、交渉成立だな。 ついでにこれもやらぁ!」


3万ギルは銀貨30枚のようだ。

カゴいっぱいに果物までもらってしまった。

物欲しそうに見てたのバレてたのかな?


「あら、ずいぶん気前がいいのねぇ?」


「まあ、今は景気がいいからなぁ。 ……エルフ様のおかげさ」


「エルフぶひ?」


バンダナおじさんは少し辺りを気にして、バンダナを深く下げた。

声を潜めるように語る。


「あぁ。ここしばらくエルフ連中がこの都市に滞在している。目的はわからねぇがダンジョンに籠っているって話しだな。都市はエルフ産の霊薬なんかも入ってきてるし、ダンジョン素材の買取量も増えて好景気さ」


「そうなんだブヒ」


「まぁ、あんまりみかけない怪しい連中も増えちゃいるがな」


「ぶひ……」


それって俺のことかな?


「ぷっ、おまえさんくらい怪しければ、逆に安心だがな! はははっ!」


ひどいブヒ!

と思ったけど、まぁ仕方ないか。

格好も体格も顔だちも、俺みたいなのはいないし。


「いろんな種族がいるんだなぁ」


あらためて周りを見渡せばたくさんの種族が存在していた。

人種ではなく、そもそもの種族が違うんだ。

獣人、亜人、よりどりみどりである。

猫耳お姉さんは実在したのだ。


「珍しいのかしら? 迷宮都市なら他種族が多いのも普通だと思うけれど」


「そうなのブヒ?」


「ああ。 迷宮に潜る冒険者が所属する冒険者ギルドは国に縛られない。 それは種族に縛られないってことでもある。 だから迷宮都市は必然的に他種族が暮らす都市になるな」


もこもこの凶悪そうな顔をした獣人も、鱗の生えた尻尾を持つリザードマンみたいな亜人もみんな冒険者なんだろうか? 暗い夜道で出会ったらおっしこちびっちゃうよ、絶対。 一見すると魔物っぽいよね。 どういう基準なんだろう。 

ひょっとして、リアルオークもいたりするんだろうか?


「オークは魔族だぞ?何言ってんだ?」


「ぶひ……」


バンダナおじさんが呆れたように手を上にして言った。


オークはだめらしい……解せぬ。



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