vs23 女性も剣術を!

 体力作りの為の授業は、将来騎士団長となるベルンハルトが主体となって行われた。

走り込み、腹筋と背筋、腕立て伏せから剣術…それらを男子が行う。

女子は基本的に体力が弱いので、走り込み…軽いランニングと柔軟体操で終わる。


ランニングを終えたマリアがベルンハルトに寄って行く。

「私も男子みたいな剣術が習いたいな。自分の身は守れないと困るでしょ?」

「困る? 護衛騎士に守って貰えばいいだろう」

ベルンハルトがふっと笑って言う。

「あら、私は平民だから護衛騎士なんて居ないのよ? それに、女だけの中で魔物に襲われたら?」

その意見にベルンハルトが何も言い返せずにいると、マリミエドも勇気を出して参加する。

「それは賛成ですわ。わたくしも教育の中で剣術は習いますもの。身を守る剣術、是非指導して頂きたいわ」

そうマリミエドが真剣に言うので、ベルンハルトは困惑しながらもレイピア程の木の棒を2つ持ってくる。

「ならばこれで素振りだ。突きの方がいいか…?」

自問自答しながらもマリアとマリミエドに渡して、自分も長い木の棒を持つ。

「レイピアならこうして突く、サーベルなら切り落とすのもあるので振り降ろす」

そう言いながら、突きと振り降ろしをやってみせる。

2人が同じようにやると、周りの女生徒が数名寄ってくる。

「あの、わたくし達もやらせて頂けませんか?」

そう言うので、ベルンハルトは困りながらも苦笑して頷いた。


それからは数人の女生徒達が素振りをして授業を終えた。


 着替え終えて教室に戻ると、男性達が素振りをしていた女生徒に話し掛ける。

「何故素振りを?」

「自分の身を守れたら、騎士の方も安心して戦えるでしょう?」

笑ってマリアが答える。

「しかし女性が剣術など野蛮なのでは…」

そんな否定的な意見に、ついマリミエドが反論する。

「あら、皇后陛下はレイピアを習っておりますわ。いつ如何なる時に暗殺者が来てもいいようにと、肌見離さず短剣もお持ちです」

「………」

その意見に何も言えず、数名の男性が立ち去る。

中には舌打ちをする者もいた。

〈…野蛮なのはどちらかしら。マリアさんに聞けそうに無いわね…〉

先程の事を聞きたいが、皆と楽しそうにお喋りしているので入って行けず、マリミエドはバルコニーに出る。


 次の授業は自習…。

それぞれの自由にしていい時間だ。

不得手な勉強を進めたり、友達同士で教え合ったりする。

それから昼食で、帰るだけだが…。

〈…お友達も作りたいわ…〉

楽しそうなマリア達が羨ましい。

〈あんな風に、楽しくお喋り出来たらいいのに…〉

いざ話をすると、ついつんけんした受け答えになってしまうのは自覚している。

〈楽しく、のびやかに…〉

練習をしてみてはどうだろうか?

〈そうだわ! 自習時間はお喋りの練習をしましょう!〉

皆のように明るく笑い合って話が出来るようになろう!

マリミエドはグッと胸の前で拳を作り、そう決意した。

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