第21話 本好きの上機嫌


 ノルンちゃんが遊びにきたので、お昼ご飯にする。

 今日のお昼は、白ご飯に魚の塩焼き、それと野菜スープだね。


「わわわ……! これはなんなのですか……!?」


 白ご飯を見たノルンちゃんが盛大に驚く。


「え……? ご飯だけど、見たことないの……?」

「こんな食べ物は初めてみたのです」

「え……そうなんだ……」


 ファンタジー世界、ヨーロッパ風の世界だから、こっちではお米食べないのかな?

 でも、コッメていう植物はあるんだよな……。


「これ、コッメからクラフトしたんだけど……ほんとに知らない?」

「ええ……!? これがあのコッメなのですか……? 普通、コッメは食べないのです……」

「え? そうなの……? じゃあコッメってなに?」

「あれはただの雑草として扱われてますよ? こんな白くなるなんて知らなかったです」

「そうなのかー、まあ、とりあえず食べてみてよ」

「食べるのです」


 どうやらコッメそのものはただの雑草扱いらしい。

 コッメからお米にするには、クラフトする必要があるもんね。

 クラフトの使えない現地の人たちにとっては、コッメは雑草なんだ。

 もったいない……!


 はじめてみる食べものに、ノルンちゃんは恐る恐る口をつける。


「んーーーーー! これは美味しいのです! とっても魚とあいますね!」

「でしょ……? 私の故郷ではこれが主食なんだー!」

「サクラちゃんの故郷ですか? エルフの里ですか? エルフに伝わる主食です?」

「あー、まあそんな感じだね」


 正確には日本という国だけど……。

 まあ、日本人って頭もいいし寿命も長いし、ほとんどエルフみたいなもんでしょ!

 知らんけど。


「んー! こっちの野菜スープも美味しいですねー。ほんと、サクラちゃんは料理が上手です」

「はは、ありがとねー」


 まあ、私が料理してるんじゃなくてクラフトがすごいんだけどね!

 お昼を食べ終えて、ノルンちゃんがもってきてくれた本を見せてもらう。

 前回、私が調味料をあげたから、そのお返しに本をもってきてくれる約束だったよね。

 ノルンちゃんはいくつかの魔法書をもってきてくれた。

 おかげで、私はあらたに【ヒールⅠ】【サンダーⅠ】【キュアⅠ】の魔法を覚えた。


「はえーすっごい……。サクラちゃんはすぐに魔法を覚えて、天才なのです!」

「はは……」


 なぜだか魔法書を見るだけで覚えられるからなー。

 これも転生者特権というやつだ。

 実際の中身を読んでも、魔法の理論とかよくわからん。


 ノルンちゃんはそのほかにも、いろいろ本をもってきてくれた。

 これも私のリクエストだ。

 神話だったり、童話だったり、恋愛小説だったり、とにかく街で売れている本をもってきてくれたよ。


「おーー! ありがとうねーー! やっぱ本はいいよーー!」


 魔導書は内容はさっぱりだったけど、小説とかなら読める。

 ていうか、ゲームの中の世界のはずなのに、本が全部ちゃんと書かれていて、作りこみがすごい。

 やっぱりここは、単純にゲームの中というよりも、ゲームによくにた異世界なのかな。

 ノルンちゃんやヴィンにしたって、NPCとかAIって感じはしないもんね。

 普通に生きている人間だ。


 神話はちょっと難しくてよくわからんな。ていうかつまらん。

 童話はちょっと単純すぎる。

 でも、日本の童話に似た話が多くて興味深い。


 恋愛小説は気に入った。

 いろいろ種類があるから、しばらくは楽しめそうだ。

 他にも冒険小説とかも、かなりの長編があるみたいだ。

 けっこう小説の文化とかが発展している世界なんだな。

 よかったよ……某転生小説みたいに、本のない世界だったらどうしようかと……。

 私には一から本を作るような根性はないよ~。


「サクラちゃんは本が好きなのですね~」

「うん、まあね。子供のころはよく読んだよ」


 就職してからは、全然そんな暇なかったけどね。

 毎日仕事に追われてて、ほんとは本も読みたかったけど、そんなゆったりとした時間はなかった。

 せいぜいがゲームをちょっとやれるくらいだったもんな~。

 それも睡眠時間を大幅に削って、だし。

 おかげで過労死して今に至るわけだ。


 でも、今は違う。

 今は森でゆったり生活してるし、読もうと思えば好きなだけ本が読める。

 もう、最高の環境だよ~。


 ノルンちゃんと本を読んだり、おしゃべりしたりしていると。

 またまた来客があった。


 扉がトントンとノックされる。

 扉を開けてみると、そこにいたのはなんと、ヴィルだった。

 まったく、どいつもこいつもタイミングが悪い……。

 

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