第41話 未来予知があるなら欲しいものだ

 放課後。二階にある空き教室へと向かう為に廊下を歩いていた。教室を出る時に教室内をチラッと見渡したが飛鳥の姿が無かったので、既に空き教室へと向かったようだ。


(それにしても犯人は一体誰なんだろう)


 飛鳥の様子から察するに犯人は確実に分かっている様子だった。つまりはこの学園の生徒であることは確かだ。まあ教室を指定している時点で当然なんだけど…。


 そんなことを考えながら歩いていると、あっという間に指定されている教室の前へと着いた。

 周囲を見渡してもほとんど人の姿が見えない。

 ここは学園でも端の方にある教室になるので、主要教室に比べて人通りがないのは当然。だからこそ、人を呼び出すのには適している。


(このまま何事もなく終わってくれ)


 そう願いながら、俺は物陰へと隠れた。



 私は指定された空き教室にて、手紙の差出人である犯人が来るのを待っていた。

 教室内は長方形になっており、机や椅子は数十個程度しか置いてない。少人数クラスで使われる教室と同じ広さになる。


(なるべく手前の方にいよう)


 奥の方に行けば逃げ道はない。

 もし相手に扉側を陣取られるようなことがあれば鍵を閉められて、それこそ密室になってしまう。


(折角、近くで風磨くんに待機をしてもらっていても鍵を閉められたら意味をなくしてしまうからね)


 扉側の二列目に座ると、スマホから通知音が聞こえてきた。


 スマホの画面を見ると風磨くんからメッセージが届いていた。


【風磨:所定の位置に到着した】


 無事に風磨くんも準備が出来たようだ。


【飛鳥:もしもの時は頼みましたよ!】


 手を合わせながら「おねがい」と書かれたスタンプを送る。


【風磨:出来る限り頑張るけど…期待はしないでほしいな。てか、今朝自信満々に言っていたのに犯人まだ来てないじゃん!?】


 うっ…それを言われてしまいますか。

 確かに自信満々に宣言した。だって、ドラマやアニメだと先に来ていることが多いいんだもん。


【飛鳥:私だって的外れをすることはありますよ!未来予知が出来る訳ではないんですから!】


【風磨:確かにそうだね。でも未来予知が出来ていたら、今回の件はなかったかもね。例えば、写真を撮られることを分かっているから、違う道を通って帰宅する対策をしたり】


【飛鳥:それは理想的な話になりますけど、現実的には不可能に近いので難しいですね】


 それに未来予知が出来たら、私にとっては色々と知りたいことがありますよ!!

 

 どうしたら風磨くんに昔のことを思い出してもらえるか。そのきっかけとなる鍵のありか。これから先、同棲生活を続けていると何が起こるのか。


 いや———それは知らない方がいいかな。

 寧ろ、自分から行動していけば何かしらのことは起こるはず。ラッキースケベとか?


 そんな馬鹿なことを想像しているだけで、口元が少しだけ緩んでいるのが感覚として伝わってくる。


 次に送られてきたメッセージで、私は一息してから緩み切った顔を真面目な顔へと戻す。


【風磨:あっ、足音が聞こえてきた】


 続けて風磨くんはメッセージを送ってくる。


【風磨:えっ…この人が犯人なの?!】


 風磨くんの驚きのメッセージが来るのと同時に教室の一つしかない扉がガラガラと開く。


 そして———以前、私に告白してきた他クラスの男子が現れた。


(やっぱりね)

 

 

 

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