第32話 ご褒美デート④

「ふぅ…美味しかった。かなり満足だ」

「私も満足度がかなり高いです!あのお店はリピートしたいですね」


 あれからショッピングモールに着いた俺たちは、三階にあるレストラン街に来た。思った通り、レストランはかなり混んでいた。

 その中で一軒の気になるお店があったので列に並び、そして数十分待って昼食をした。


「飛鳥が褒めるなんて珍しいね」

「もちろんです!もし出来るなら、家でも挑戦してみたいですね」

「………マジか。まあ楽しみにしているよ」

「あまり期待していない言い方ですね」


 そんなことを言われても、飛鳥には飛鳥だけの美味しい料理があるから…な。


「気の所為だと思うよ。それよりも、この後はどうする?」

「考えている場所がありまして、ガシャポンエリアと服屋と本屋の三択になりますけど、どれがいいですか?」

「まさかの三択?!」


 しかも、どの場所も絶妙な場所だな。

 ガシャポンはまたお金使うし、本屋は見たい本はなかった時は困るからーーー服屋しかない。


「なら…服屋にしようかな」

「服屋ですね。 では館内にある服屋をいくつか回ってみましょう」


 俺はコクリと頷き、そして服屋へ移動した。



 ここはショッピングモールなので服屋も数件ある。紳士服やレディース、さらに子供服など専門店が多々あるのだが…。


「どうして最初に来るお店がここなのかな…?」

「滅多に挑戦しない服を見るのも醍醐味ですよ」

「その気持ちは分かるけど…」


 まさかゴスロリの服屋になるとは、ね。


「風磨くんだって言ってたじゃないですか。新鮮な服装姿を見たいと。なので、ゴスロリなのです!」

「確かに言ったよ…だけどさ、ゴスロリの発想になるのは思い付かないでしょ?!」

「それは風磨くんの想像力が足りないのですよ。想像してみてください。私のゴスロリ姿を」

「飛鳥のゴスロリ姿を、か」


 俺は目の前にある服に目を向けながら、飛鳥が着ている姿を想像する。


 ………飛鳥が黒のゴシックドレスを着る。

 うん…何と言うか……かなり似合いそうだな。


 次に近くにある軍服ワンピースにも目を向けた。


 ………これは格好いいな。

 こちらも普段とは違い、飛鳥のかなり格好いい姿が想像できる。これで模造刀や拳銃を持ったら本当に格好いいんだろうな。


「どうですか? ちゃんと想像は出来ましたか?」

「出来ましたね」

「それでどんな想像をしたのか教えてください?」

「………えっ」


 飛鳥が自分の姿を想像していいと言ったから想像したけど、その想像内容を本人を目の前にして語らないといけないのは辛い。


「さすがに言うのは…ね」

「私から提案したのですから、そんな細かいことは気にしないでください」

「………本当にいいんだな?」

「どーんとこいです!」


 飛鳥は胸に手を当てドヤ顔をしてきた。


「それじゃあ、話すけどーーー」


 俺は飛鳥に想像した内容を話す。


 飛鳥のゴシックドレスが似合いそうなこと。

 そのあとに近くにあった軍服ワンピース姿を想像して、いろいろと武器を持ったら格好いいこと。


「と言う感じに想像しました」


 話し終えて、飛鳥に視線を戻すと、飛鳥の顔が少し赤くなっているように見えた。


「飛鳥? 大丈夫か?」

「問題はありません。ただ…」

「ただ?」

「かなり詳しく想像していたので…少し恥ずかしくなってしまいました」


 それは問題ありと言うのでは?とは思ったけど、それらを飲み込んで頬を掻きながら。


「なんか…ごめん」


 そう言って、苦笑する。


「いえ、これは私の問題ですので。風磨くんは気にしないでください」

「飛鳥がそう言うなら…分かった」

「と、とりあえず、他のお店も回りましょうか」

「そ、そうだね。時間的にも服屋巡りが最後になりそうだしね」


 スマホで時間を確認すると時刻は十六時半を過ぎていた。館内にいると時間の感覚がなくなるな。


「一日が経つのは早いですね」

「それだけ楽しいお出掛けだったんだよ」

「風磨くんも楽しめてもらえたのなら嬉しいです」

「お…俺も楽しめた、かな」


 時々、素直に話せないのが俺の問題だな。


 そして俺たちは紳士服やレディース専門店へと向かうことになった。その時に飛鳥が「少し待っててください」と言ってゴスロリの店内へ行き、帰って来た時には謎の大きめな袋を持っていた。


 ………何を買ったんだろう。


 そんなことを思いつつ、俺たちは専門店を見て周り、ご褒美デートは終わった。

 

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