第28話 圧倒的強者の霧宮さん
その日の放課後。
自宅に戻った俺はリビングに行くと、霧宮さんが制服を着たままソファーに座って待っていた。
目の前にある机の上には学校で貰った横長のプリントに似た紙が置いてあった。
(あれが霧宮さんの全科目の点数表だな)
そう思いつつ、俺は帰宅の挨拶をする。
「ただいま」
「おかえりなさい!」
俺は鞄を床に置きつつ、霧宮さんと対面になるように座った。
「早速ですが、合計点数勝負をしましょうか」
「いきなりだね」
「こうゆうのは早くに終わらせて、ご褒美関連の話をした方がいいのです」
「………ん? いまの言い方だと、霧宮さんは俺が全科目で八割を取れたと確信しているよね?」
「当然です! 何故なら、私が先生なので!」
とんでもない自信過ぎるでしょ。
これで目標点数を取れていなかったら、俺だけ恥ずかしい思いをするだけじゃん。
「ははは…凄い確信だね」
「はい! 柳木くんの様子を見たら、これくらいの確信は持てますよ!」
「なるほど」
返事をしながら、俺は鞄から全科目の点数表を取り出して、裏返しのまま机の上に乗せた。
「よし、俺も準備が出来たよ」
「それではせーの合図で同時に紙を捲りましょう」
「分かった」
「「せーの」」
と言って、俺と霧宮さんは紙を捲った。
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霧宮 飛鳥
国語総合:90点
数学 :85点
英語 :94点
化学基礎:89点
世界史 :88点
古典 :86点
数学A :88点
合計点数:620点
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柳木 風磨
国語総合:81点
数学 :80点
英語 :83点
化学基礎:87点
世界史 :84点
古典 :80点
数学A :81点
合計点数:576点
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「霧宮さん強すぎでしょ?!」
圧倒的な敗北をした。
「これが先生の実力です!どうですか?私のことを見直しましたか?」
「見直しました。霧宮さんはとても最強でした」
「ちゃんと私の実力を見てもらえたようで、私はとても嬉しいです」
霧宮さんはニコっと微笑んできた。
「それで約束の件を覚えていますか?」
来た…。霧宮さんとした二つの約束。
一つ目が点数で半分超えたら、お互いに名前呼びをすること。もう一つが俺が八割取れたら、霧宮さんがご褒美デートをしてくれること。
そしてこの条件を二つともクリアーした。
つまりーーー。
「覚えているよ。名前呼びとご褒美デートでしょ」
「はい。こちらを見事にクリアーしたので、約束通り実行したいと思っています」
となる訳だ。
「それでいつから始めるの?」
「今からですよ、や…ふう…風磨くん」
「 !! 」
突然の名前呼びは心臓に悪い…な。
それにしても何度か名前で呼ばれたことはあったけど、今回の名前呼びが一番破壊力があった。
つまり、これを超える名前呼びを俺も霧宮さんにしないといけないのか。ハードルが高すぎるよ。
霧宮さんはさらに顔を赤くする。
「私は呼んだのですから、早くや…風磨くんも私のことを名前で呼んでくださいよ」
いつもの霧宮さんと違って、いまの霧宮さんは新鮮で何だか可愛いな。
俺はコクリと頷き、深呼吸してから口を開く。
「今回の勝負は俺の負けです。 そしてきり…飛鳥とのご褒美デートを楽しみにしています」
ふぅ…少しつっかえてしまったけど、何とか最後まで言うことができた。
実際にご褒美デートの為に頑張ったところもあるから、楽しみにしている発言は嘘ではないしね。
チラリと飛鳥の方を見ると、先程よりもさらに顔が赤くなっているように見えた。
「飛鳥、顔が赤いけど大丈夫?」
「もう!風磨くんのバカ!!」
何故か俺の真横に来て、右腕に向かってポコポコと優しく叩かれた。
「それでご褒美デートの件だけど、目的地とかは決めているの?」
飛鳥の腕を押さえつつ、質問をした。
少し落ち着いたようなので押さえていた腕を離すと、コクリと頷いた。
「私が考えたのは大型ショッピングモールです」
「ショッピングモール?」
「これに関しては理由がありまして、最初は折角のデートになるので水族館や動物園などがいいかなと思っていたのです」
確かにいま言った場所はデートでは定番だな。
いろんな人にデートのオススメを聞けば、大体は水族館や動物園を答えるかもしれないな。
「ですが、その二つは本当のカップルになった時に行きたいと思ったのです。それに友達以上恋人未満の私たちが行ったところで、その場所をちゃんと楽しめるのか不安もありました」
なるほど。少しだけ気になる発言があるけど、飛鳥にとって水族館は恋人関係で行きたいと…。
やはり気になるけど、それらを抜きにして話を進めていくしかない。また脱線をしたら、永遠に話が終わらなくなりそうだしね。
「飛鳥にも色々な考えがあるんだね。それなら大型ショッピングモールでのデートでいいよ」
「本当ですか!」
「いいよと言ったのに反対する人はいないよ」
「そうですね!では、綿密にプランを練っておきますので当日を楽しみにしていてくださいね」
「分かった」
そして夕飯の支度をして、食事を終えた後はテストの復習を一緒にした。
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