第27話 何故か覚醒疑惑を掛けられました
中間テストから一週間が経った。
ここまでで既に五科目が返却をされていて、その五科目全てが目標の八割を無事に取れていた。
(俺って、やれば出来る子だったんだ)
そして今日は残り二科目の英語と数学の解答用紙の返却と全科目の点数をまとめた紙を渡される。
(あと二科目で約束の全科目八割を達成できる)
実は霧宮さんには先に返却されている五科目の点数をまだ報告していない。それは霧宮さんも同じでお互いの点数を知らない状態。
俺としては一つ一つ報告してもいいと思ったのだが、霧宮さん的には一気に発表して合計点数勝負をしたいと言われた。
そんな感じでドキドキしながら担当科目の先生を待っていると、目の前で大きなため息をしているのが聞こえてきた。
「ため息ばかりついていると、幸せがどんどん逃げていくぞ?」
「そう言われても、俺のライフポイントは既に瀕死の状態なんだよ」
西城は俺の机の上に突っ伏して、ぶつぶつと不満を呟き始めた。
「それで俺の机の上で不満を言うのはおかしいだろ。こっちまでモチベーションが下がるからマイナス思考を呟くのをやめろ」
「柳木なら大丈夫だ。俺の攻撃はほぼ無効だから」
「どうゆうことだよ」
そんな無効化が出来るなら、もっと違うことに無効化の能力を使いたいんだけど。
「つまり俺がどんなに攻撃をしても、柳木には一切の攻撃が効かないということだ」
「そうだな。だけど俺が聞きたいのは何でゲーム仕様みたいな話になっているのかだよ」
「普通にゲーム仕様の話の方が柳木も分かりやすいと思ったからな」
「確かにゲームをやるから分かりやすいけどーー」
さっきまでマイナス思考だった人がうきうきしながら発言する内容ではないよな。
「随分と楽しそうに話すよな」
「そりゃ、気分が紛れるからに決まっているだろ」
それなら俺のおかげだな。
これは何かしらのお礼をしてもらわないと。
「それなら何か奢って貰おうかな」
「おいおい、どうして俺が柳木に奢らないといけない話になるんだよ」
「気分を紛らわす手伝いをしたから」
「それとこれとは話が変わるだろ。 だからこそ、俺が奢る意味はなーい!」
「そうかよ」
最初から期待はしていなかったから、これくらいのことは簡単に予想は出来ていた。
だけどーーー返事の仕方が腹立つな。
目立つように両手を広げて、何が『意味がなーい!』だよ。普通に言えよ。普通にな!!
すると教室の前方の扉からガラガラと開く音がして、担当科目の先生が入って来た。
「はーい。テスト返却を始めるから席に着いてね」
先生の言葉でバラバラに散らばっていたクラスメイトたちが自席へと戻っていく。
「それじゃあ、俺も戻るとするか」
そう言って、西城も席へと戻った。
「では、皆さんお待ちかねのテスト返却をします」
「待っていないよー!!」
「もうテストはいらない!!」
「見ないで持ち帰ろうかなー」
ざわざわとクラスメイトたちが雑談を始める中、先生は普通に返却を始めた。
「それでは出席番号一番のーーー」
出席番号順に手際よくテストが返却されていく。
俺の苗字は柳木なので一番最後の方だ。
だから人一倍緊張感が増してくる。
「霧宮さん」
「はい!」
霧宮さんの番になり、霧宮さんは返事をして先生のいる教卓に向かった。
そして先生からテストを受け取り点数を確認すると、胸に手を当てホッとした様子が見えた。
どうやら自分の納得のいく点数を取れたようだ。
霧宮さんのことだから九十点とか普通に行ってそうだし、この時点で合計点数が俺の負けになるのは確定だよな…。
「次、西城くん」
「はい…」
西城は椅子から重い腰を上げて、とぼとぼも教卓の方へと歩いて行った。
そして霧宮さんと同じようにして解答用紙を受け取ると、点数を確認せずに席へと戻って来た。
「点数を確認せずに戻って来たな」
「当然だろ。あの場で見た落ち込むくらいなら、自分の席で見て落ち込んだ方がいい」
「まあ気持ちは分かるけど」
西城は「だろ」と言い、深呼吸をしてから解答用紙を捲った。
「まあ妥当な点数だな」
「納得のいく点数だったのか?」
「予想よりも点数取れていた感じだわ」
「それは良かったな」
やっぱり教えてくれないか。
まあ俺も点数は教える気はないからお互い様かな。もし西城が教えてくれるなら教えるけどね。
「次、柳木くん」
「はい」
名前を呼ばれたので、俺は返事をして教卓に向けて歩き出した。
「柳木くん、よく頑張ったね」
「ありがとうございます」
先生から解答用紙を受け取ると、先生が「一つ聞きたいのだけど」と聞いてきた。
「柳木くん、覚醒したのか?」
「突然何ですか?!」
「実は高校入試の時の点数に比べて、今回の中間テストは全体的に点数が比較的に上がったと話題になっていたんだよ」
「先生たちって、高校入試の点数を把握しているんですね」
「それは秘密だよ」
もう遅いですよ。先程、自分で『高校入試の時に比べて』と発言していたじゃないですか。
「それで、今回はどうして点数がいいの?」
何でって言われても、「霧宮さんとの約束で八割取らないといけないので」とは言えない。
「高校一発目のテストだから頑張りました。期末テストの時にはどうなっているか分かりませんけど」
「そこは学期末まで頑張ってほしい所だね」
「………出来る限り頑張ります」
「期待しているよ」
俺は小さく挨拶をして、自席へと戻った。
「随分と話が長かったな」
「先生に揶揄わられていたんだよ」
「あれか、テストの点数が悪すぎて勉強しないでゲームをしていたんだろう〜的なやつだろ」
「何で点数が悪いことが前提になっているんだよ」
それに仮に点数が悪かったとしても、先生がそんなことは言わないだろ。せめて、『ちゃんと勉強したのか?』や『分からないのなら補習してもいいぞ』が妥当だと思うだけど。
「まあいいじゃないか。お互いに満足いく点数が取れたみたいだしな」
「ほんと気分屋だよな。まあいいけどさ」
「という訳で、俺は寝るから」
そう言って、西城は机に突っ伏した。
その後、残り一科目のテストも返却され、最後に全科目の点数を載せた横長の紙を担任の先生から貰った。
(いよいよ霧宮さんとの合計点数による勝負だけど…ここまでの様子を見る感じだと、俺が勝てる見込みはゼロだな)
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