第21話 料理教室(後編)
料理教室を終えた私たちは駅前にある喫茶店で一休みしていた。
「飛鳥ちゃん。料理教室は楽しかった?」
お義母さまはニコリと微笑みながら聞いてきた。
「とても楽しかったです! 同時に私の料理技術にはまだまだ足りない物があると感じました」
今回は体験コースに参加したけど、帰り際に見せてもらった他のコースにはまだ作ったことがないような料理のレシピが沢山あった。
(色々と挑戦はしてみたいんだよね)
そんなことを思いながら、注文していたミルクレープを一口食べる。
「好奇心があるのはいいことだけど、上級者の域に達している飛鳥ちゃんに言われると、主婦としては負けた感じに思えるね」
「そんなことはありませんよ!!」
両手を振って否定しながら言葉を続けた。
「お義母さまの方が立派な上級者ですよ!」
「あら、嬉しいことを言ってくれるね。お世辞だとしても久しぶりに褒められて嬉しいわ」
「嘘偽りなく本音です! 仕事をした後に家事をするお義母さまは本当に凄いと思います!」
基本的に食事を用意するのは私。
掃除や洗濯などは分担をしている。
だけど柳木くんのお義母さまはそれらを一人でこなしている。仕事に行く前と仕事から帰宅後に。
「そんなに褒めても何も出ないわよ〜」
柳木くんのお義母さまは少し顔を赤くしながら頬に手をあて、そしてアイスティーを一口啜った。
(そろそろ本題に切り込んで見ようかしら)
ずっとタイミングを考えていた。
料理教室の時は話せなかったし、待ち合わせの時も話す機会がなかった。
だけど全ての予定が終わり、一休み中の今なら話をするタイミングとして大丈夫なはず…。
「あの…話が変わるんですけど…いいですか?」
「全然大丈夫だよ。 それで話は何かな?」
「この間、柳木くんが友人と家で会った時に色々とあったらしいんですよ。その時に何があったのか教えてくれなかったので、お義母さまなら何か知っていることはあるかな…と思いまして」
「あの日か…」
柳木くんのお義母さまは腕を組み、そして考える素振りをした。
「その…何も無いのでしたら大丈夫ですからね」
「確かに様子はおかしかったわね」
「やはり何かあったのですね!」
「そんなに食い付くなんて、飛鳥ちゃんは風磨のことが好きなんだね〜」
「そ、そんなことはありませんよ!?」
ただ柳木くんを揶揄いたいだけ。
その為の情報だからこそ食い付くのも当然。
「飛鳥ちゃんは可愛いね〜」
「お、お義母さま?! 揶揄わないでくだひゃい!」
「うんうん。噛んでしまう程動揺しているね〜」
どうして柳木くんのお義母さまの前になると、私は動揺したりして上手く話せなくなるんだろう。
(ま…まあ好意が無いとは否定出来ないけど)
柳木くんのお義母さまは「風磨は愛されているわね〜」と満足そうに言いながら、ケーキを食べた。
「い…いま関係のない話は置いておいて、何があったのか教えてくださいよ!!」
「とりあえず、私のケーキを一口食べて一旦落ち着こうね」
と言い、私の口に一口サイズに切ったケーキを食べさせてきた。……このケーキも美味しい。
「どう? こっちのケーキも美味しいでしょ?」
「とても美味しいです」
柳木くんのお義母さまは微笑んできた。
「それじゃあ、落ち着いたみたいだから話すけど、風磨が帰宅した後に部屋を確認したらーーー」
「確認をしたら…」
「風磨の机の上に小さい頃に貰っていたラブレターが置いてあったのよ。本人はしまったと思っているらしいけど思いっきり置いてあって、その場で笑いが止まらなかったわよ」
「ラブレターですか…そのラブレターには何か特徴とかありましたか?」
それによってはきっかけの鍵の一つになると思うのだけど…。
「ただ風磨の名前だけが書いてあって、気になることがあるとしたら相手の名前が無かったことくらいで目立った特徴は無かったかな」
「なるほど…相手の名前が無かったと」
「ラブレターなのに不思議なことがあるんだね〜」
「そうですね」
そのラブレターの特徴を思い出しながらケーキを一口食べた。
そして約一時間程の一休みは終わり、柳木くんのお義母さまとはその場で解散をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます