第15話 家(実家)に友人がやって来た

 あれから数日が経った土曜日。

 いよいよ、西城が実家の方に遊びに来る日を迎えた。本当は実家にも来なくていいんだけど。


「よし…これなら大丈夫だろ」


 西城が家に来るのは昼頃になるので、その間に俺は自室の部屋の整理をしていた。


 その中でフィギアの棚を念入りにした。

 前回は霧宮さんに白い布を簡単に捲られたが、想像と違う反応で助かったけど、西城にはバレないようにしたい。


 西城にはフィギアを集めていることを話していない。それに見つかった時に、かなり面倒くさいイメージがあるしな。


 そこで今回は黒い布を被せて、四隅をテープで貼り付けて捲らせないようにした。


 まあ、安易だとは思うけど大丈夫だろ。


 ———ピンポーン


 そう思っていると、ベルの鳴る音が聞こえた。

 俺はリビングに戻り、インターホンの画面を確認すると、西城が映っていた。


 時間通りに来たか。


 俺は【通話】ボタンを押し、画面にいる西城に向けて話し掛けた。


「どちら様ですか?」

『その反応は酷すぎるだろ!! あと画面で俺のこと見えているんだろ?』

「ごめん、ごめん。 何となくやりたくなって」

『その気持ちはよく分からないけど、とりあえず開けてくれ』

「少し待ってて」


 そう言って、下にある【開錠】ボタンを押した。


 画面に視線を戻すと、西城が手を振りながらエレベーターのある方へ向かっていく姿が見えた。


 (一々、反応しなくてもいいのに)


 そう思いながら、玄関へと向かい、ドアの鍵を開けて西城が来るのを待ち構えた。


「よっ! 遊びに来たぜ!」


 エレベーターから出て来た西城は俺を見つけると、軽く片手を上げて挨拶をした。


「不本意だが、ようこそ我が家へ」

「お客様に対して、その挨拶も酷すぎるだろ」

「知らん」


 そう返答しながら、西城を家へと入れた。


「それで俺はどこに向かえばいいんだ?」

「リビングに決まっているだろ」

「柳木の部屋は見せてくれないのかよ〜」

「とりあえず、リビングに行くんだよ」


 「おいおい」と西城は言っているが、気にせずに彼の背中を押してリビングへと向かう。


 そしてリビングに着いたら、ソファーに座るように指示をして、俺はキッチンへと向かい、お菓子や飲み物を準備して、リビングにある机の上に置いた。


「それで何をしに来たんだ?」

「用が無いと遊びに来たら駄目なのか?」

「当然」


 基本的に家に友達を呼ぶことはない。

 小学生時代は数回程誘うことはあったが、中学時代になれば友達と遊ぶこと事態なくなっていた。


 だから俺が家に人をあげるのは、とても珍しいことになる。あの時の霧宮さんは両親と山神さんがいたから例外だけどね。


「あと、あまり家に人を呼びたくない派だからな」

「それなのに俺を家に招待してくれた…と。 柳木、本当にありがとうな」


 泣くフリをしながら、俺の肩に右手を置く西城。


「西城が遊びに行きたいと催促をしてきたら、仕方がなく許可を出したんだからな。 お前の為に招待はしていないからな!」

「照れ隠ししなくてもいいからさ」

「そんなことはない。 本当に家に呼ぶつもりはなかったんだからな!」

「はいはい。 で、俺が来た目的だろ?」

「そうだよ」


 嘆息しながら、俺は返事をした。


「特に理由はない!」


 はっ…?

 理由がないなら、家に来ようとするな。

 今回の訪問のことで、どれだけ悩まされたと思っているんだよ…。


「それなら、今すぐにお帰りください」

「帰らないぞ」


 西城はソファーにしがみ付いた。


「お前な… 特に理由がないなら、家に来る必要もないだろ」

「理由がなくても遊びに来る人はいるぞ?」


 「例えば、俺みたいな人とかな」と付け加え、紅茶を一口啜った。


「全部お前じゃん」

「仕方がないだろ。 俺以外の人がいたとしても、会ったことがないのだから」

「そうだな… で、一体何をする?」


 理由がなくてもやりたいことはあるだろう。

 それに反論する気力も無くなったから。


「柳木の部屋に行きたい」

「却下」

「即答かよ!」 

「許可する人はほぼいない。 西城には許可を出す必要はない」


 俺の部屋には誰も入れない。

 親と霧宮さん以外は絶対に入れないんだから!


「そんなに拒むことはないだろ」

「駄目なものは駄目だから!!」

「ちぇ…仕方がないから諦めるよ。 んじゃ、俺はトイレに行ってくるわ」

「分かった」


 俺は西城に場所を教えると、西城はソファーから立ち上がり、トイレへと向かった。


 それにしても何がしたかったんだろう。

 理由がないのに家に遊びに来たり、いきなり部屋に入りたいとかーーー許可する訳ないだろ。


 (それにしても、西城とのやり取りは疲れるな)


 そう思いながら嘆息していると、廊下の方から西城の声が聞こえてきた。


「ここが柳木の部屋か〜 なかなか綺麗だな」

「 !? 」


 すぐに俺はその場から立ち上がり、廊下の方へと向かうと、西城が俺の部屋を開けていた。


 マジかよ…。

 

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