第14話 緊急会議

———その日の夜。


 俺は『緊急事態発生』とメッセージを母さんに送り、新居の方に来てもらった。

 そしてリビングで俺と霧宮さん、そして母さんの三人で話し合いをしようと思ったのだが…。


「お義母さま、こちらはいかがですか?」

「とても美味しいわよ」

「簡単な手料理になってしまい申し訳ありません。 あまりにも急だったので」

「風磨が勝手に呼び出しただけだから気にしなくていいわよ。それに飛鳥ちゃんの手料理も食べれたし、私としては満足だから」

「ありがとうございます」


 こんな感じで二人で盛り上がっていた。

 俺のことは蚊帳の外にして…ね。


「あの…そろそろ本題を話したいのですが…」

「そーいえば、話があるんだっけ」

「母さん…そこは忘れないでくれ」

「飛鳥ちゃんの手料理で満足して、もう帰ろうかと思っていたわ」

「何でだよ!?」


 それだとタダで霧宮さんのご飯を食べただけで、母さんが得しただけじゃん。そしたら、いくらか請求でもするか…?


 霧宮さんはキッチンから紅茶を用意して、俺と母さんの前に置いた。そして俺の横に座り、彼女は紅茶を一口啜り、本題を聞いてきた。


「それで何があったのですか?」

「実は友人から家に遊びに来たいと言われた」

「普通に家に呼べばいいじゃない」

「それが簡単ではないんだよ」

「何を悩んでいるのかしら」

「この家に友人を呼んだら、霧宮さんとの同棲がバレてしまうってこと」

「「なるほど」」


 母さんと霧宮さんは揃って頷いた。


 母さんはいいとしても、霧宮さんは落ち着き過ぎない? 貴方が秘密にしたいと言ったんですよ?


「確かに問題発生ですね」

「でしょ! 同棲のことがバレた瞬間、友人に何をされるか分からないし」

「その友人にはどう返事を返した訳?」

「一日待ってくれと伝えた」


 だから緊急招集をして緊急会議を開いている。

 本当に緊急事態だからな。


「確かに困りましたね」

「この家に呼べば勝手に部屋に侵入されそうだし、霧宮さんの私物もあるから…悩んでいて」

「あら、簡単に解決出来るじゃない」


 そう言って、母さんは紅茶を啜った。


「解決方法とは?」

「その友人と共に風磨が実家に来ればいいのよ。 何も同棲先にこだわらなくてもいいじゃない」


 確かに実家に呼べばいいだけの話だ。

 実家なら霧宮さんのことは絶対にバレないし、見られても恥ずかしい物もない。フィギア系はーーもう見られてもいいや。


「柳木くん。 私の為に大変な苦労を掛けてごめんなさい。 美味しい料理を作って待ってますね」

「そんなことしなくてもいいわよ。 飛鳥ちゃんの所為ではないんだから。 それよりも、今度一緒に料理教室でも行かない?」

「料理教室ですか!! とても興味あります!!」

「この料理教室なんだけど、土日に開催しているんだけど、飛鳥ちゃんは予定大丈夫かな?」


 母さんは机に伏せていたスマホを手に取り、霧宮さんに画面を向けた。


 あの…俺の話は…?


「大丈夫ですよ」

「それじゃあ、私と連絡先の交換いいかな?」

「もちろんです」


 霧宮さんもスマホを手に取り、母さんと一緒にQRコードで連絡先を交換した。


 あれで俺の話は終わりなの…か?


「それじゃあ、予約出来たら連絡するから、飛鳥ちゃん楽しみにしていてね」

「はい! 心待ちにしております!」


 霧宮さんは満面の笑みを向けて返事をした。


「という訳で、私は帰るわ」

「マジで俺の話終わりだったのかよ…」

「解決したんだから終わりに決まってるでしょ。 それと家に来る時は連絡してね。私、仕事でいない可能性があるから」

「分かった」


 「それじゃあ、おやすみ」と言って、母さんは家へと帰っていった。


「問題が解決して良かったですね」

「霧宮さんも楽しみが出来て良かったね」

「はい!」


 そして俺たちは就寝の時間までリビングでゆっくりと過ごした。

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