第16話 友人の家捜しにより○○が見つかりました

「西城…お前、何をしているんだ?」


 部屋の前にいる西城を睨みながら聞くと、こちらに視線を向けて苦笑してきた。


「柳木の部屋を確認していただけだよ。 だから、そんなに睨むなよ」

「数分前に言ったことを忘れたのか? 俺は自室には案内をしないし、中にも入れないと言っただろ」

「そうだとしても、柳木の部屋が気になったんだから仕方がないだろ〜 そう、睨むなよ」


 気になったとしても家主が嫌だと言ったら、遠慮して入らないのが普通だよな。


 そこら辺の常識を持ち合わせて無いのか?


「よし、睨むのはやめよう。だから、今すぐに扉をゆっくりと閉めるんだ」


 未だにドアノブにある手を指差しながら、俺は表情を戻した。

  

 西城は言われ通りにドアノブから手を離す。


「ほら、手を離したぞ。 これでいいんだろ?」

「よし、そのままリビングに戻れ」

「命令かよ!?」

「当たり前だろ」


 先に約束を破ったのは西城。

 そんな彼に優しく語り掛ける必要はない。


「分かったよ」


 西城は嘆息した後、リビングのある方向に体を向けた。そしてリビングへ歩き出そうとした時ーー


「と言う訳ないだろ」


 そう言って、西城は俺の部屋へと問答無用にずかずかと室内へ入っていった。


「……っは?!」


 俺は西城の後に続いて自室へと入室した。


 中へ入った俺は西城の肩に手を置き、後ろから話し掛けた。


「西城、それはアウトだ」

「何がアウトなのか分かりません〜」


 肩の手を振り解き、西城は部屋の中を探索し始めた。マジで面倒くさい人だな。


「下手なことをしたら強制退場するからな」

「どうやって?」

「まず、リビングにある鞄を持って来て、そのまま鞄と共にお前を玄関から追い出す」

「一応補足しとくけど、柳木が俺のことを外に追い出せる力はあるのか?」

「そ…それは…」


 確かに西城の言う通り、俺には西城を追い出す力はない。同じ帰宅部のはずなのに、ここまで差が生まれてくると泣けてくる。


「だからさ、柳木は諦めて、俺に許可を出すしかないのさ」


 悔しいがその通り過ぎて反論出来ない。


「分かった。 この部屋にいる許可を出すよ」

「よっしゃ! てことで、家主から許可が出たと言うことで、さらに深掘りしていくぞー!」


 そう言って、ベッドの下や押入れ、さらには本棚などを物色していく西城。


 流石に許容範囲を超えているので止めたい所なのだが、ここまでのやり取りで疲れていたので、ただ呆然と眺めていることにした。


(幸い、フィギア棚には興味無さそうだしな)


 そう安堵していると、急に西城が大きな声を上げた。


「こ…これは!!」

「大声を出すなよ… それで何があったんだ?」

「柳木…これは何だよ!?」


 そう言いながら、目の前に出して来たのは一枚の犬の絵が描かれた封筒だった。


 懐かしいな…。確か、幼稚園の時に女子に貰ったんだよな。あの女の子の名前は何だったっけ…。


「普通に手紙だな。 だけど幼稚園の頃のだから、あまり深い意味はないぞ」

「てことは、ラブレターだな。 何だよ、柳木は幼稚園の頃からモテモテだったのかよ〜」

「例え、それがラブレターだとしても、今は全然モテていないので違います」


 それに手紙の内容を覚えていないんだよな。

 手紙を大事にしまってはいたけど、内容に関しては幼稚園以降見ていないから忘れた。


「それじゃあ、俺は手紙を見るのを辞めよう」

「………えっ」

「その変な空気になるのやめてくれね?」

「絶対に西城は見ると思ったから。 さっきも部屋に問答無用で入りやがったし」

「それとこれとは別だ」


 何をどうしたら区別付くのか分からないな。


「そ、そうなのか。 なら、その手紙は返してくれ。 いつまでも持たれていると不安です仕方がない」

「本当に信用してくれないな」


 今までのことを考えたら、簡単に信用が出来る訳がない。


 西城から手紙を受け取る。

 受け取った手紙を確認すると差出人の名前はなく、俺の名前だけが書かれていた。


(中に書かれているのか?)


 そう思い、中から手紙を取り出して確認するも、差出人の名前は書いていなかった。


 内容に関してはーー察してくれ。


 てか、ラブレターなら差出人である自分の名前を書かないと、俺は返事を返すことが出来ないだろ。


 あれ…? 俺、返事返したっけ?

 

「返した途端に目の前で確認するのは、どんな拷問だよ」

「拷問にはならないだろ」

「それで中身を確認して何か分かったのか?」

「何も分からなかった」


 下手に答えたら、また興味を持たれて色々と聞かれる可能性がある。だから、返事はこれでいい。


「何だよ。 つまらないの」

「お前を楽しませる目的はないからな」

「そうか、よ」

「てことで、さっさとリビングに戻るぞ」

「へいへい」


 そして俺たちはリビングに戻った。

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