第10話 朝起きたら…隣にいた

「はぁ…さっぱりした」


 じゃんけんに勝った俺は一番風呂を頂いた。

 やはり風呂はいい。全ての疲れが湯船で取れる。


「って、その顔はどうゆう心境…?」


 霧宮さんは不満そうな顔をしていた。


「柳木くんのことを恨んでいるところです」

「何で俺が恨まれないといけないんだ?!」

「私にじゃんけんで勝ったのと一番風呂を奪ったのが原因です」

「なら、一番風呂を譲ったとして、その後に俺が入って変な想像をされてもいいの?」

「そんなことを考えていたのですか…?」


 霧宮さんは軽蔑するような目を向けてきた。


「そんなことは考えていないよ。 俺は紳士だから、そんな妄想するようなことはしないから」

「それならいいのですが…私が一緒にお風呂を入ろうと誘った時はどう思いましたか?」

「……」


 その質問は反則だよ…。

 俺がどう答えても、霧宮さんは絶対に不満そうな表情をするに違いない。


 霧宮さんは首を傾けた。


「どう思いましたか?」


 答えさせようとする圧が凄い。


「何を答えても怒らない…?」

「私が質問したのですから怒りませんよ」

「その…ドキドキしました」

「つまり?」

「邪な気持ちが心の片隅にありました」


 何で同級生の女の子に、こんなカミングアウトをしているんだろう…。そもそも、お風呂を一緒に入ろうと提案してくる霧宮さんがやばいのか?


「やはり柳木くんも男の子ですね!」

「何で嬉しそうなんだよ」

「気の所為ですよ! ですが、いつかは一緒にお風呂に入れるといいですね」

「〜〜〜〜!!」


 「では、お風呂に行ってきます♪」と言って、霧宮さんは浴室へと向かった。


 何だか、霧宮さんに遊ばれた気がした。



 その日の夜。

 一室の部屋が開いた。中から出て来たのは可愛いらしいパジャマに身を包んだ女性。 


 彼女は眠そうな目をこすりながら、ふらふらと廊下を歩き、お手洗いへと入った。


 数分後、手洗い器の水が止まるのを確認した彼女はふらふらと来た道を戻り、出て来た部屋とは反対・・の部屋へと戻って行った。



 ———翌朝。


 カーテンから差し込む日光で目が覚めた。

 時間を確認する為に頭上に置いてあるはずのスマホを取ろうと腕を動かした瞬間、手の甲に柔らかい感触を感じた。


(ベッドにこんな感触はなかったはずだが…?)


 そう思い、ベッドから上半身を起こし、違和感を覚えた方に視線を向けると———


「どうして俺の部屋のベッドで寝てるの?!」


 そこには、すやすやと気持ち良さそうに眠る霧宮さんがいた。……理解が追いつかない。


(それにしても寝顔、綺麗だな)


 霧宮さんの寝顔を見れるのは、彼女の両親や山神さんの他に俺だけだろう。謎の優越感。

 それに寝顔をよく見れば、長いまつ毛にさらさらとした栗色の髪が美しく見えた。


 あとパジャマの隙間から見える豊満な双丘。

 これは…ダメだ。邪な気持ちが…。

 欲望を抑えながら俺は起こさないように、彼女に毛布を掛けた。


「さてと、起きて準備をしますか」


 ゆっくりとベッドから降りて、俺は準備の為にリビングへと向かった。

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