第2話 え?織田信長?

「……えーと、俺歴史苦手だから間違ってるかもしれないけど、織田信長って苛烈かれつな人でしたよね?確か“鳴かぬなら殺してしまえホトトギス”の人ですよね?助けたら、世界、余計不安定にならないです?」

「それは私も思います。織田信長は優秀な人だけれど、世界を安定させたいのなら260年も続く江戸時代を築いた“徳川家康”を手伝ったほうがいいんじゃないかしら?」


 同じ反応を示す周防すおう姉弟にしおりはさすが姉弟だなぁと笑みを零す。確かに、織田信長といえばそういうイメージだよなと納得もするのだ。


「その苛烈さがネックなのよ。遊馬あすまくん、本能寺の変はさすがに知ってるわよね?」

「あれですよね、明智光秀に裏切られて殺されるやつですよね?」

「ちょっとだけ違うわね。明智光秀は織田信長を殺してはいない。織田信長は自刃じじんーー要するに自殺するの」

「……怨念、すごそうですね」

「そうなの。その怨念が時空を歪ませ、悪影響を与えているの。だから、織田信長を助けて生き延びてもらうのが今回の任務なんだけどーー」


 コンコンと管理官室がノックされる。栞がはいと返事をしたら、ふたりのタイムキーパーが姿を現した。


 高身長イケメンで男女問わずメロメロにしてしまう男ーー美濃漆みのうるしと低身長運動神経オバケの男ーー椎名秋しいなしゅうの幼馴染凸凹コンビがいた。


「ちょうど良かったわ、漆くん、秋くん。あなたたちの任務に遊馬あすまくんと飛鳥あすかさんを加えます」

「これはこれは飛鳥嬢とご一緒できるとは、何たる光栄」


 流れるように漆は飛鳥の手の甲にキスをする。


「私だけじゃなくて、遊馬も秋さんもいますけどね」


 飛鳥もさらりと手を離し、距離を取る。

 実はタイムキーパーに女性はふたりしかいない。飛鳥と栞がそうだ。漆はよくふたりを口説いているか、ふたりに漆の気持ちは届いていない。


「いい加減にしろ、漆。報告が先だろう。……管理官、今回も駄目だった。本能寺の変は遅かれ早かれ起こってしまう。明智光秀以外が起こすこともある。本能寺の変で信長を生き残らせても、また次の謀反むほんが起きて、結末は変わらない。もっと過去からのアプローチか、謀反を起こす側の人物へのアプローチが必要だと思う」

「……どうやら信長の人間性の問題になりそうね」

「あぁ。だから、任務の人数が増えるのは有り難い」

「ひとまず、漆くんと秋くんはタイムマシンを連続使用しているから安定率の測定と休養を。その間に遊馬くんの勉強も兼ねて織田信長の文献を参考にし、作戦の立案をしましょうか」


 ひとまず漆と秋は部屋を出ていく。


「飛鳥。彼を呼んできてちょうだい。今回は彼の頭脳が必要そうだわ」

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