第15話 幼馴染の話4
全校集会が終わり。
少しして、先生が教室に入ってきた。
引き戸の窓から頭が見える良君の言っていた転校生かな。
「新しく転校してきた岩田 あゆみさんを紹介します。入ってきなさい」
「はい」
返事と共に入ってくる背の低い可愛らしい女の子。
「私の名前は岩田 あゆみです。前の学校ではあゆみって呼ばれてました。こちらの学校でも、頑張りたいと思います。よろしくお願いします」
「ということで、皆よろしくお願いね。皆、岩田さんのこと色々知りたそうだし、次は私の授業だし、とりあえず親睦でも深めとく?」
先生が、生徒達から話のわかる教師として人気があるのもわかる。
女子校からの来た可愛い子って事で男の子達の鼻息が荒い。
小さくて可愛いとなれば女の子達も興味津々だよね。
良君もちょっと興味ありげにそわそわしてる。
良君って性別関係なく仲良くなるんだよね。友達100人は余裕で居そうだよ。
だから色々と情報を持っているんだろうな。私たちと大体一緒にいるのにすごい行動力だよね。
彼は、全然興味ありませんよって顔してて安心したよ。
「あ、あの私、皆のこと知りたいので自己紹介とかしてもらってもいいですか?」
岩田さんも結構フレンドリーな感じ?
良君と同じタイプなのかな。
ハキハキしてる感じが、微笑ましいというかすごく可愛い。
彼も興味持ったかも?と慌てて隣を見ると相変わらず全然興味ありませんよって顔してた。
良かった。そうだよね、私がいるもんね。
――――――――――――
みんなが自己紹介を終え、彼の番になった時
「えーと、「あー!あなた、今朝の!」」
突然、岩田さんが叫び、彼の前で指を差して
「まだ終わっていませんからね!」
これは一体どういうことなの。泥棒猫なの!?
どこで彼は岩田さんと知り合ったのだろうか。
少なくても私と一緒に居た時には会っていない…さっきトイレに行ってた時?
まさか、彼から声を掛けたのだろうか。そんな事ないよね。
集まるクラスメイト達の視線、良君の楽し気な顔。
そして、私は、彼に射殺せそうな視線を突き刺す。
そんな中、彼は事のあらましを話し始めた。
………
つまり、彼が廊下を歩いていると曲がり角で反対側から走ってきた岩田さんとぶつかり、岩田さんが小さいので岩田さんだけ転んだ。
岩田さんは、遅れそうだったので急いでいたのだから、彼が避けるべきだと言って足早に立ち去ったとの事である。
話を聞いた先生は、
「いくら遅れそうだとしても廊下を走ってはいけません。そもそも遅れるとわかった時点で連絡をするべきです…」と、岩田さんと彼にお説教が始まり
そして、先生の授業は自己紹介とお説教で終わった。
――――――――――――
お昼休みが終わる頃
彼が教室に入ってくると、岩田さんが何か言いたそうに彼を見ていた。
岩田さんの前を通り過ぎる時、腕掴まれ何か言われていた。
彼が自席に座ると同時に問いかけた。
「岩田さんに、何を言われたの?」
「一緒にお説教されたからって、許したわけじゃないって言われた後に、逃がさないとも言われたかな」
朝の話を聞く限り、岩田さんが泥棒猫の類ではないと思ってはいたが、次の休み時間に話を聞きに行くことにした。
だって、泥棒猫も困るけど、ストーカーになってしまったらもっと困るでしょ。
しっかり私の彼に手を出すなってアピールしておかないとね。
だから、良君は楽しそうにこっちを見ないんだよ。
――――――――――――
休み時間
「ねえ、岩田さん。今いいかな?」
「はい、大丈夫です!えと……すみません…」
「あ、まだ名前覚えていないよね。私は西村 真美子だよ。よろしくね。」
「はい、西村さん。よろしくお願いします」
「それでなんだけどね。悟に対して随分とご立腹のようだけど、何が気に入らないのかな?」
私は、彼を指さして岩田さんに問いかける。
返答次第では、明日も転校してもらおうかな。
「え、あ、はい。実は………………」
「つまり、岩田さんは、右側通行なのに左側を歩いていた悟とぶつかって、岩田さんだけ倒れたのに、心配もせずにぶつかるのが悪いと言った彼が許せないと」
「はい。変なやつって思われるかもしれませんが、ルールは守らないといけないと思うんです。私も遅れるからと廊下を走ってしまった事に関しては反省しています…なのでぶつかってしまった事に関しては、お互いに悪かったと思っています」
彼と接点を持ちたいから言い掛かりをつけたわけじゃないんだね。そっか、そっか。
ぶつかって倒れている岩田さんを心配しない彼も悪いよね。岩田さんだけ倒れたっていうし、もしも岩田さんが怪我しちゃってたら大変だったよね。
しかし、岩田さんは曲がった事が嫌いな性格なのかな。変に正義感振りかざして己を顧みない人じゃなくて、ちゃんと自分も悪かったと反省出来るのは良いと思う。
岩田さんとなら仲良く出来そうだね、泥棒猫じゃなくて本当に良かった。
「ちょっと待っててね」
私は岩田さんに声を掛け、自席で寝たふりしてる彼の腕を引っ張って連れてくる。
「お待たせ、ごめんね。悟が迷惑掛けちゃってさ。人の心配しないなんて最低だよね。謝らせるから許しあげてもらえるかな?」
「ほら、謝りなよ、悟」
「え、いや…だって、なんで」
「私は岩田さんの味方だから、早く謝って!なんで謝れないの?謝りたくないの?」
「…今朝はすまなかった」
頭を下げて謝罪する。
「違うでしょ。許して欲しい時はどうするの?」
彼は土下座した。
「えーっと」
岩田さんは、困惑した顔で彼と私を交互に見合わす。
「ほら、悟もこうして謝っているから許してもらえると嬉しいかな」
「わ、わかりました。次からは気をつけて下さいね。右側通行ですよ。相手が倒れていたら心配もして下さい。私も今後は急いでいても絶対に廊下を走りませんので」
「悪かったよ、岩田さん」
「はい、これでこの件は終わり」
パンと手を叩き、もうこの件はお終いですよと私は教室中にアピールする。
変に後引いても良くないからね。
「じゃあ、この機会に、悟もついでによろしくね。私と悟は、幼馴染で幼稚園の頃から一緒なんだー」
「そうなんですね、随分と仲良さそうなのでお付き合いされているのかと思ってました」
「え、そう見える?見えちゃうかな、ふふふ」
なんでこれで仲良さそうに見えるんだ…という彼の呟きが聞こえた。
「あ、岩田さんのこと、あゆみちゃんって呼んでいいかな?私の事は真美子って呼んで」
「はい、真美子さん。よろしくお願いしますね」
休み時間が終わるまで、あゆみちゃんと話したけど、やっぱり良い子そうで良かった。
彼に色目を使わないところがすごく良い。
うちのグループに入ってくれたらいいのにな、入ってくれるかな。
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