第14話 転校生の話5

 階段を駆け上り、職員室のある階に出ます。

 この廊下を曲がれば、もう職員室が見えるはずです。

 

 私が曲がろうとしたその時、


 ドンッ


 私は壁のような何かに勢いよくぶつかり、倒れた。

 

 痛ぁ…私は、何にぶつかったのでしょうか。どうやら人にぶつかったようですね、全く。怪我は特になさそうですが、盛大に転倒してしまいました。

 私は、立ち上がりながら前の人に向かって言いました。


「前を向いて歩いてください、痛いじゃないですか」

 

「ぶつかったのは悪いけど、急に出てきたのはそっちじゃないの?」


 私が小さくてよく見えなかったとでも言いたいのでしょうか。不愉快です。


「急いでいたんです。避けてくれればいいじゃないですか。あと真っ先に倒れた私を心配してくれてもいいと思うのですが」


 私だけ派手に転倒しているというのに、目の前の男子生徒は、倒れた人を心配する気持ちは無いのでしょうか?怪我をしていたらどうするつもりなのですか。随分と冷たいのですね。


「急いでるなら早く行った方がいいよ」


 確かにそうですが、謝罪の一言も無いですし、人としてどうなのでしょうか。全く、不愉快、極まれりです。許せません。


「そうでした、急がないと。まだ許していませんからね」


 私はそう言いながら、急いで職員室へ向かいました。


 ――――――――――――


 私は、担任の先生に連れられて教室の前までやってきました。

 呼ばれたら入って来てくださいと言われていたので、呼ばれるまで待っています。


「新しく転校してきた岩田 あゆみさんを紹介します。入ってきなさい」


 先生の声が聞こえました。


「はい」


 私は、出来るだけ元気の良い返事をし、教室に入っていきました。


「私の名前は岩田 あゆみです。前の学校ではあゆみって呼ばれてました。こちらの学校でも、頑張りたいと思います。よろしくお願いします」


 なるべく当たり障りのないように挨拶をしてみましたが、皆さんの反応はどうでしょうか。少しドキドキしますね。


「ということで、皆よろしくお願いね。皆、岩田さんのこと色々知りたそうだし、次は私の授業だし、とりあえず親睦でも深めとく?」


 先ほど職員室で説明を受けている時から、生徒に慕われているんだろうなと思っていましたが、クラスの皆さんの反応を見る限り、私が受けた印象は間違っていないと思いました。

 そういう先生のクラスであればと、私は声を上げました。 


「あ、あの私、皆のこと知りたいので自己紹介とかしてもらってもいいですか?」


 だって、折角転校してきたのですから、皆さんと仲良くなりたいじゃないですか。

 

 次々とクラスの皆さんが自己紹介をされていきます。よく話に聞くような寒いギャグとかお調子者の自己紹介といったものはなく、感じが良く、私を歓迎してくれているのだなと、とても好い印象を受けます。

 そして、次の生徒の自己紹介が始まります。


「えーと、「あー!あなた、今朝の!」」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る