第5話 転校生の四方山話

 突然ですが、私には仲の良い友人が3人います。

 クラス全員とは割と仲が良い方だと私は思っていますが、その中でも特に仲の良い人を挙げるならその3人だと思います。


 某学生の味方なお店での話。


「ね、有名じゃないのやつでおすすめの曲ってある?」


 雑誌のモデルさんのようなスタイルの由美ちゃんが聞いてきます。

 月一くらいで告白されてるようで、大変羨ましい限りです…私も一度くらいは……お母さんの遺伝子仕事してよ!!!


「んー、そんなの適当に選んで聴いとけばいいっしょ?」


 見た目ギャルな春奈が適当に答えてますね。いつもの事ですが。

 ま、こんな見た目に反して優等生だったりするのは詐欺ですね、私よりも成績が良いなんて、全く。許せません。


「……多分由美が使ってるのと違うやつなら色々ある」


 なんかこうアニメとかに出てきそうな感じの凛が、やっぱりアニメキャラっぽい話し方で答えてます。

 見た目も話し方もこんな感じなのに、オタクじゃないと頑なに本人は言い張るんだから。もしかして、昔そんな風に言われて何かあったのかな。でも普段その手の話は全くしないし、本当の事かもしれません。引越しする前にちゃんと聞いてみよう。教えてくれると嬉しいな。


 私は、流行りの曲とか聴かないし、特に拘りがあるわけではないので会話に入らず食べるのに集中します。

 だって奢りですよ、お・ご・り、折角、三人がご馳走してくれるというのですから、私いっぱい注文しちゃいました。ふふふ。


「あたしが使ってるのと違うのって何?」


「……EppleとかYovTvbeのじゃないやつ」


「えーお金かかるやつじゃん」


「…違う音楽の販売と配信サービスやってる。けど、アルバム丸ごと試聴出来たり、曲の値段を自分で決められる」


「それは楽しそうだね」


「…bandchampっていう名前で、ジャンルは沢山ある。サブジャンル的なものも検索出来るし、とても便利」


「サブジャンル?」


「…例えばjazzだったら、 modern jazzとかbig band jazzとか vocal jazz とかそんな感じ」


「あっ、凛がたまに言ってるスタバのコーヒーみたいな名前のやつ!」


「む、違う。それはPure Depressive Black Funeral Doom Metal」


「あはは、それそれ」


 春奈がお腹抱えて笑ってます。お店に迷惑なので、足を蹴飛ばして黙らせます。


「痛ったぁ、何すんのさ」


 私はジト目でうるさいと口パクで伝えます。


「ごめんごめん、煩かった?食べるの邪魔してごめんて」


 べつに私の食事の邪魔はしていませんけどね、大人しくなったので食事を再開します。

 あ、追加注文した品が運ばれきました。これも食べるのが楽しみですね。


「それはいいとして、自分でジャンルとか…そのサブジャンル?を調べていけばいいの?」


「…よくない。けど、それであってる」


 ふむ、まだデザートはやってきませんね。

 追加で頼みたいので、呼び出しボタンを押しましょう。


「どのジャンルが聴きたいとか無いんだけど、その場合はどうしたらいいの?」


「…ブラウザからなら新着やDAILY。アプリからならfeaturedかfeedを見るといい」


「家で見てみるね、ありがと。で、凛のおすすめってあったりする?」


 店員さんがやってきました。

 デザートのお願いとデザートの追加をお願いします。


「…おすすめは、blackgaze。DSBMでもいい」


「blackgaze?ディーエスビーエム??」


「…blackgazeは、black metalとshoegazeが混ざったジャンル。DSBMはDepressive suicidal black metalの略」


「ヘビメタだ!」


 春奈は、見た目に反して中身がおじさんなので、反応に困る時がありますね。

 あ、これも美味しいです。


「…違う、ヘヴィメタル好きに言うと怒られるやつ。カッコつけてメタルっていう」


「凛ちゃん、違うのでお願い」


「ん、違うジャンル。私の中ではRaw Black Metalが熱い。音質が悪ければ悪いほど燃える。おすすめ」


「全部ヘビメタじゃん」


「あは、変なスイッチ入っちゃったね」


「ふぅ、ごちそうさまでした。おいしかったです」


 いやぁ食べました、食べました。

 ちょっぴりウエスト辺りがきつくなりました。


「「「………」」」


「え?なんで見るの?顔に何かついてる?」


 ペーパーナプキンで口もとを拭きます。


「いやーなんかあゆみらしいなと」


「転校先でやっていけるのかお姉さんは心配」


「…通常運転」


「やだなぁ、大丈夫だよ皆。こう見えてしっかりしてます」


「「「ふーん」」」


 おかしいですね、美味しく食事をしていただけの私が何故そんな目で見られなければならないのでしょうか。

 あ、今日の晩御飯は、私の大好きなカレーなんですよ。

 お母さんのカレーとっても楽しみです。


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