第4話 転校生の話2

「ね、お父さん、大事な話ってなんなの?」


 お母さんも気になっているようだ。


「実は、来月から西京支社に異動になってね。最初は単身赴任でもと考えていたんだけどさ、前々から引越したいと母さんも言っていたろ?だからさ、これを機に引っ越してもいいかなと思ってね」


「まぁ、それは急な話ね。引越しは嬉しいけど、この子の通学の問題もあるでしょう?」


 お母さん、嬉しそうなのに無理やり心配そうな顔を作るという何とも微妙な顔つきで私の方を見た。

 

「流石に、あゆみを一人で置いていくわけにもいかんだろう。母さんはついてくる気満々のようだけど。あゆみはどうしたい?私は、最悪単身赴任でも良いと思っているんだ。だから遠慮なく言って欲しい」


「私?私も一緒に行くよ。どうせお父さんが独り暮らし始めたら、お母さんそっちに行きっぱなしになりそうだしね。独り暮らしは憧れるけど、色々不安があるし、まだいいかな。でも、お父さん、転校出来るような学校って異動先の近くにあるの?」


「うーん、どうだったかな」


「大丈夫よ、あゆみ。お母さんにまかせなさい!」


 そこはかとなく不安を感じるよ…大丈夫かな、お母さん。

 我が家(古い造りのマンションの2LDK)から引っ越せるなら、引っ越したいと思う。

 友達と離れるのは寂しいけど、もしかしたら新たな出会いがあるかも!…なんてね。


――――――――――――


転校生がツンデレなのは、アニメやゲームの中だけです。きっと。


次の日のお昼休み。


食事が終わった後、皆に声を掛ける。


「あのね、由美ちゃん達に言わなきゃいけないことがあるんだけど」


「どしたの?」


「昨日、急にね、お父さんが転勤するって話をし始めて…家族みんなで引越しすることになったの」


「「「えっ!」」」


「いつ引っ越すの?」


「引越しするって学校は?」


「転校?」


「うん、転校することになっちゃって。引越しは今月中」


「そっかー、寂しくなんね」


「お父さんの都合じゃ仕方ないか」


「「「………」」」


皆が落ち込んでしまった。どうしよう。


「でもさ、あゆみが転校生になるんだったらさ、テンプレまんまじゃん」


「…ツンデレ転校生」


「凛、ウケる」


全然、落ち込んでなかった。酷い。


「あ、これだ、昔の言葉でいうと、それなんてエロゲってやつ」


「「sneg!」」


突然、意味のわからない事を言われて爆笑された。

スマホ覗き込んで何かやっているなーとは思いましたが…この子たちは。


「あはは、ごめんごめん。あゆみ、いじけんなって」


「つい、出来心みたいな?」


「…ごめん」


「謝られたって許してあげませんからね」


放課後、某学生の味方なお店で皆からいっぱいご馳走になりました。


ご馳走してもらったからって許してあげ…てもいいのかな


私、チョロいですかね?

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