第6話 転校生の話3

 登校日、当日。


 朝


 緊張していたのか、目覚まし時計が鳴る前に起きてしまいました。

 初日から忘れ物があるといけないので、再度、確認してみたけれど、まだまだ時間があります。

 少し早いけど、朝ご飯を食べに行きます。


「お母さん、おはよう」


「おはよう、あゆみ、今朝は早いわね」


「うん、なんか早く起きちゃった」


「もうすぐご飯出来るから、お皿並べるの手伝ってね」


「はーい」


 ――――――――――――


 食事を終え、新しい制服に着替えます。

 前の学校ではセーラーだったので、ブレザー姿はちょっと新鮮です。

 クローゼットの鏡の前で、クルクルとポーズを取っていると、半開きの開き戸からニヤニヤするお母さんの顔が見えた。


 そっと戸を閉じました。


 ――――――――――――


 昨日のお話では、全校集会が終わった頃に来てくださいとの事でしたが、登校初日に遅刻なんて事になっては大変です。

 ふんすと気合を入れて部屋を出ます。


「気を付けていってらっしゃい」


「行ってきまーす」


 玄関まで見送りに出てくれたお母さんは、何か微笑ましい物を見るような、生暖かいような、優しい目をしているのが、少々、いえ、大分イラっとしますが、油断していた私が悪いので平静を装い歩き出します。


 自宅から学校までは、電車で5駅、歩く時間も考えると片道35分程でしょうか。

 引越してきてから初めて電車に乗るので少し緊張します。

 だって前住んでいた所の駅よりも大きいんですよ。

 なんと路線が3路線もあって…前は1路線だけだったので、違う行先の電車に乗らないように気を付けないといけません。


 改札を抜けると発車案内板が幾つもあります。

 流石にホームが多いですね、どれが私の乗る電車のホームなのでしょうか…ここを上ったところのようですね。

 高架駅なのでホームにはエスカレーターで上るようです、前は地上駅だったので、少しワクワクしてしまいます。

 ついつい、前の駅と比べてしまうのは仕方ないですよね。


 ホームに着くと、電車のドアが閉まりますという放送が!!!!

 駆け込み乗車にならないように素早く手前のドアから乗車します。


 ふう、車掌さんに怒られる事なく乗車出来ました。

 思わず、飛び乗ってしまったので、早く学校に着いてしまいそうです。

 降車駅に着くまで、窓から流れる風景を楽しみましょう。

 

 次の駅に到着する構内アナウンスが聞こえます。

 なんということでしょう、自分の耳を疑いました。

 どうやら私は、逆方面へ行く電車に乗ってしまったようです。

 ですが、早めに家を出ていて正解でした、次の駅で逆方面へ行く電車に乗っても十分間に合います。

 しかし、ホームの両側で行先が違うとは…前は1つホームで1方向だったので、うっかりしていました。


 駅で降り、ホームを逆方面側に向かいます。

 はい、しっかり発車案内板も確認しました。ばっちりです。


 そして、次の電車がやってくるのです。

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