第6話 無敵艦隊出撃

聖暦1530年6月29日 ルージア大王国東部 城塞都市オルシア


『侵攻のスピードが著しく落ちている事に関して、何か申し開きはあるか?』


 ルージア東部の城塞都市オルシア、その中心部にある城の広間にて、ルージア大王ニコロ7世は東征軍司令官のバドル将軍を問い詰める。


「はっ…現在、我が東征軍は劣等種族どもの反乱勢力を完全に鎮圧するべく、12万の軍勢を以て侵攻しております。ですが、現地の土民どもは抵抗激しく…」


「たわけがっ!!」


 大王の怒声に将軍は身震いし、後ろに控える部下達も怯える。


『たかだか欠陥人種の寄せ集め程度に何手を拱いているのだ!さっさと蹴散らせんか!』


「はっ…で、ですが、彼の国には未知の新興国が支援を行っており―」


『言い訳は聞いておらぬ。すでに海軍は上陸部隊を引き連れて出撃しておる!それも無敵艦隊がだ!』


 大王の言葉に、一同は息を呑む。大王国が心血を注いで築き上げた大艦隊、通称『無敵艦隊』が出撃したというのだ。


『バドル将軍よ、もしもここで失態を挽回できぬ時は…覚悟せよ!』


 魔法通信が終わり、バドルは汗顔を浮かべながら部下に顔を向ける。


「直ちに侵攻を再開し、イースティアの蛮族どもを殲滅せよ!でなければ、殲滅されるのは我ら一族郎党である!」


・・・


「うーむ、今日も絶好の航海日和だ。こういう時ばかりは洋上で釣りをしたいものだ」


 海上自衛隊潜水艦「たいげい」の発令所にて、艦長の大野おおの二等海佐は潜望鏡を覗きながら呟く。海上自衛隊最新鋭と名高いたいげい型のネームシップである本艦は、オリエティス島北部海域の動向を探るために展開していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

レッドサン・シンギュラリティワールド 瀬名晴敏 @hm80

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ