第5話 第7師団、見参

西暦2030(令和12)年6月27日 イースティア王国西部 ネルシア地方


 防衛出動の決定から3週間が過ぎたこの日、陸上自衛隊第7師団はイースティア王国西部のネルシア地方に展開していた。


 北海道を防衛する北部方面隊に属する第7師団は、南樺太や千島列島より侵攻してくるロシア陸軍の機甲部隊を迎撃するために編制された機甲師団であり、200両以上の主力戦車を有する、陸上自衛隊でも最強格の部隊である。


 そして今回、ルージア大王国軍が地竜を主要戦力とする大軍を、西部地域の主要都市であるウェザリオへ向かわせているとの報告を受け、ウェザリオ近郊に展開していた。


無人偵察機システムFFRSによる偵察によると、ルージア軍は百頭以上の地竜を先頭に立てた騎兵部隊を展開している模様です。数では我が方を圧倒していますが、装備の面で言えば比較になりません。先ずは撤退勧告を発し、相手の反応を探った上で攻撃を仕掛けましょう」


 参謀の説明を聞き、師団長の武本たけもと陸将はテーブルに敷かれた地図を見ながら唸る。歩兵戦力相手であれば特科部隊の榴弾砲で蹴散らせるだろう。だが地竜については能力に不明瞭な点が多い。先の航空自衛隊の爆撃と海上自衛隊の巡航ミサイル攻撃で被害を受けているとはいえ、それで戦闘を諦める様な存在ではない筈だ。


「ともかく、こちらも時間は必要だ。西部方面戦車隊はすでに戦果を挙げ、空自も制空権確保の功績をあげている。故に我らも、新たなる友邦の土を踏みにじる侵略者を撃退する事で、その存在価値を知らしめるのだ」


『了解!』

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