第4話 攻撃開始

西暦2030(令和12)年6月20日 イースティア王国北部 港町ノスコスタ


 ノスコスタの沖合に、20隻程度の艦船が浮かぶ。海上自衛隊輸送隊群と第2護衛隊群からなる自衛隊派遣部隊は、西部方面隊を主体とした陸戦部隊を護衛しつつ、戦場に最も近い港湾都市であるノスコスタにて陸揚げを行っていた。


 敵は国境線に10万もの軍勢を展開しており、先行して展開した〈P-1〉哨戒機の偵察によると、航空戦力として常に200騎程度のワイバーンを配置しているという。よって北部方面隊より第7師団が増援として駆けつける事が決定しており、不整地における機動力が高い機甲師団で蹂躙する腹積もりであった。


 だが、数は出来る限り減らしておきたい。沿岸部に最も近い敵軍を優先的に叩き、同時に自分達の実力を示すことで、これ以上の戦争継続は無益である事を相手に知らしめる必要があった。


・・・


イースティア王国北西部 ネルシア地方上空


『エコー1よりアルファ各機、敵騎を捕捉。チャーリー到達までに掃討せよ』


 高空より対空監視レーダーで探る〈E-767〉早期警戒管制機からの報告を受け、航空自衛隊第9航空団所属のF-15J〈イーグル〉戦闘機は、自身の機首レーダーで敵ワイバーンを捉える。その後続には、爆弾を抱えた〈F-2〉戦闘機が追随しており、敵軍へ爆撃を仕掛けるべく前進を続けていた。


「目標捕捉…アルファ1、フォックス2」


 トリガーが引かれ、胴体部より2発の99式空対空誘導弾が放たれる。国産の空対空ミサイルとして高い性能を誇る99式はマッハ4の超音速でワイバーンに食らいつき、炸裂。僚機も同様の攻撃で敵ワイバーンを狙い、撃墜し始める。


 それに続き、〈F-2〉は敵軍陣地上空に到達。主翼下に搭載している航空爆弾を投下し始める。重量は227キログラムと小ぶりではあったが、密集して前進を行う歩兵の群れを文字通り吹き飛ばすのに十分たる威力であった。


「な、何事だ!?」


 対するルージア軍は、ただ動揺するばかりだった。見た事の無い様な攻撃を前に、襲撃を受けた側であるルージア軍は何の手立てを打つ事も出来なかった。洋上からは数隻のイージス艦が、トマホーク巡航ミサイルによる遠距離攻撃を仕掛けてきており、魔法を用いて築き上げた砦は木端微塵に破壊される。


 斯くして、ルージア軍の1個歩兵軍団は不幸にも自衛隊の強襲を受け、将兵2万近くが死傷する大損害を負う事となる。だがそれは、自衛隊の大規模な迎撃作戦の序曲に過ぎなかった。

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