列車

「雨の都まで行くよ」

 辿りついたのは小さな石造りの駅舎。壁に貼られた巨大な地図にクロミツがペタリと肉球をくっつけた。たぶん届いてない。

「よいしょっと」

「ん?……え!?」

 小さな身体が空中で一回転する。長い黒髪をした女性が現れた。身長は私よりも5センチくらい高い。

「クロミツ……サン?」

 綺麗な髪を鬱陶しそうに払いながらコ頷く彼女。……猫又ってすげー。

黒地の着物に金色で小さく花が刺繍されている明らかにお高い着物と金色の帯。猫の形?をしている時の面影があるけどあまりにも似つかない美人だった。

「早く行くよ陽菜」

「あっ、はいすいません!」

 小さい駅舎のこれまた小さい受付みたいなとこからぴょこん、と小麦色の三角形が覗く。三角形の下には、巨大な眼が一つだけついた白い顔。あ、口もあった。

 そいつは傘を被ったなんとも古典的な、一つ目小僧だった。本物、意外と可愛い。

「どの切符をお求めですか?」

「寝台列車、雨の都まで。2枚ください」

 一つ目小僧はニコニコで少しお待ちくださーいなんて言いながらトテトテと後ろの棚に駆け寄る。

「えっと、合計銀貨4枚です!」

「う、よん……はーい」

 クロミツはがまぐち財布の中身を覗き込んだあと顔を顰めてひっくり返す。転がり出てきたのは銀貨5枚と銅貨2枚だけ。

 銀貨1枚と銅貨2枚を財布に戻しながら気まずそうなチラリと私を見やる。……もしかしてこれからの旅わりと大変?

 何はともあれ無事切符を手に入れた私達は発車時間まで売店で時間を潰すことになった。

 売店は飴色の木で仕切られていて、申し訳程度の桜色の日差しがついている。室内だから意味ないけど。

 売店のレジから顔を出したのは頭に葉っぱを乗せたたぬき。金欠だからただ見てるだけ、というとラムネ瓶を2本無料でくれた、妖怪優しい。

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