第26話-見えてくる事2



「……か……殿下。クリストファー殿下。」


ハッとして顔を上げると、ニッコリとヤトが笑って見下ろしてくる。

「お時間でございマース。そろそろ帰りませんとエドワード執事長にドヤされるのでは――?」

真剣味の欠片も無い間延びした声。

公共の場での王族と護衛騎士という立場に合わせて、とりあえず敬語で話しているが、敬う気など微塵も感じなくて苦笑する。


「ヤトすまん。呼びに来てくれて助かったよ。」

つい夢中になってしまった。外を見ると陽はだいぶん傾いている。


「直ぐ片付ける。馬車を玄関口に付けておいてくれ。」

「了解。早く来てくだサーイ?」


集中したら周りが見えなくなるのは悪い癖だ。

大量の記録を司書官に預けると、机に置いてあった、借りても良いと言われた伝承の本を手にする。


人の体を動かす魂が向かう先、それが天ではなく、地を巡るのだとしたら。沼のように澱み溜まる魂達が魔物の発生する要因なのだとしたら。


「やれやれ、面白いな。ウィルがハマるのも分かる。」


今夜も眠れそうもない。

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