第25話-見えてくる事1
その後は、ウィルとサユ姫は従者に急かされるように書庫から出てしまった。婚礼前の忙しい時期にここまで付き合ってくれたのだから、感謝しかない。
目の前に残されたのは、山積みの資料と、これは持ち出しても良いと言われた、“神と魔物の伝承集”だ。
「じゃあお言葉に甘えて、時間いっぱい拝見させて頂こう。」
母がどの様な方だったかは分からないが、こうして僕を他国の王太子に売りこんでくれた事は感謝しかない。お陰で欲しい情報が手に入りそうだ。
書庫には研究室の者と思われる白衣を着た人が数人出たり入ったりする以外は静かなもので、日当たりも良く読書をするには最適の環境だった。
ここ十数年のトラスダン王国の魔物発生率はどんどん下がり続けている。それが、我が国だけの事なのか、それとも領土関係なく土地の発生周期などが関係しているのか。まずは法則性があるのかどうか……。
一冊、また一冊と目を通していく。
「仕事とは言え、この空間落ち着くなぁ。」
魔物の発生率はイングリスの記録でも徐々に下がっている。気になるのは南の国境、トラスダンに面した国境付近では近年ほぼ魔物が現れていないのに、北の国境付近では例年通りに魔物が発生しているという事だ。
この違いはなんだろう。
地名別に、細かく発生状況を整理すれば、何か分かるかもしれない。
「地図がいるな……。」
記録を読み耽りながら、気付いた事をさらさらと紙に書き残していく。パッと読んだだけたでも北に行くにつれて魔物が多くなっている事が分かる。
北に何かあるのか?
そういえば、トラスダンでは北の国境付近になると魔物が発生しなくなっている。
トラスダンの北側。イングリスの南側。つまりはこの国境周辺は魔物が発生していないと言う事だ。
そこから遠ざかるにつれて、徐々に魔物が発生する地域が増えていく。
トラスダンとイングリスの国境付近に魔物を発生させない何かがあるのか…………。
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