第一村人発見
「それじゃぁ、お母さん行ってきます」
「気負付けていっておくれよ。森には絶対に入ってはいけないよ」
「分かった~」
そう母に言い、シュナハは家を出た。
向かう先は森――の入り口の辺り。
肺が弱いお母さんに飲ませる薬草を摘んでくるのだが、ここ最近は森の近くで取り過ぎたためか薬草の数が減ってきている。
少し奥に入らないとあまり生えていない。
「シュナハちゃん、今日も薬草摘みかい?」
「そうなの。たくさん摘んでくるわ」
「シュナハ。帰りに
「ありがとう! 後で寄るね」
「森の奥へは行くんじゃないぞ。人が入った跡があったからな」
「分かった。気を付けるわ」
総人口が少ない上に、村に子供が少ないということもあり、シュナハは村人からとても可愛がられていた。
そしてそれは子供と言うだけではなく、病弱な母親の為に薬草を摘み煎じて飲ませているという苦労を皆に見せることなく親孝行として行っているところも気に入られる要因だった。
『早く帰って、お母さんにお薬飲ませないと。じゃぁ、少し奥に入ったところで――』
そう考えたところで、猟師のおじさんから言われた言葉を思い出す。
「人が入った跡があった」と。
猟師のおじさんが二足歩行のモンスターと人間を間違えるはずはないから、まず人間で間違いない。
そして残るは町からやってきた冒険者が定期的にやっているモンスター狩りか、私と同じように薬を摘みにやってきた人か――野盗のどれかだ。
薬草を摘みに来る人は、よほど町ではやり病が出ない限り来ることはないので、多分、モンスター狩りの方だろう当たりをつける。
「なら少しだけ森に入っても大丈夫よね」
自分に言い聞かせるように、シュナハは声に出して呟いた。
□
どのくらい走っただろうか。
数分だったかもしれないし、数時間だったような気がする。
なんて楽しい時間を過ごした心情を語ってはいるけど、ホロディスプレイに表示されているバイクの稼働時間を見れば、一時間も走っていないことが分かる。
『さて、そろそろこの辺りだったか』
この星に降り立つ前に切り離しておいた衛星から送られてきた映像では、ここから近くに村があった。
そして今現在、近くの森にはいくつかの熱源反応があり、人らしきものが活動しているのが見て取れる。
〈ルッカ。動きをどう見る?〉
呼びかけると、ホロディスプレイにルッカの顔が浮かび上がる。
〈2種類とも人間だという見解が出たわ。その内、一人分の方の行動を確認すると、近くの村から出ているわね。もう一種類の方は組織だってはいるから、民間人というより兵士の群れかしら?〉
「かしら?」とは言っているが、ルッカのいうことだからほぼ確定なんだろう。
〈兵士と村人が接触する可能性はどのくらいある?〉
〈5分後に100パーセントよ〉
〈よし、わかった〉
そういい、バイクを少し傾け森へ向かう。
速度が速度だけに、森を構成する木々はたちまち視界一杯に広がりを見せ、すぐにその全貌はぼやけていった。
〈どっちと会うつもり?〉
〈村人だ。多分、組織だっている方は兵士崩れだと思う。それで、そいつらは村人と会った瞬間、こう考える。『ぐへへ。村が近くにあるな。あいつに案内させて村を乗っ取ってやれ』ってな〉
〈漫画の読み過ぎね。兵士じゃなくて漫画家になるべきよ〉
「はぁ……」と呆れた溜息をつかれてしまった。
救難ポッドに俺の私物として漫画が入っていただけで、ルッカはその内容があまりお気に召さなかったらしく、何かにつけて比較対象にしてくる。
ちょっとルッカと似ても似つかない体系の女の子が活躍するだけの話だっていうのに、困ったもんだぜ。
森の入り口――木々が生い茂り始めた辺りでバイクを止める。
「近くで待っていてくれ」
そいうと、バイクは「分かった」と言わんばかりに、近くの茂み近くへと自動で走っていった。
あれにも簡易的ではあるが、ルッカと同じ戦闘支援用の知能が備わっている。
文句を言わない分、ルッカよりも可愛らしいかもしれない。
〈バイクでは乗り込まないのね〉
〈さすがに二輪で木々が生い茂り、地面が不確かな場所にはいれるほど腕を過信していないさ〉
〈良かったわ。そこまで漫画に汚染されていなくて〉
〈おいおい〉
歩きながら、ホルスターから拳銃を取り出す。
手に握った瞬間、ロックが外れたことをホロディスプレイに表示し、教えてくれる。
ザクザクザクザク、と岩がむき出しの地面も、土も、ひざ丈の草地も構わず進んでいく。
この
しかしその代わり、
これはシックスセンス的な部分だけではなく、肌に感じる空気の流れであったり、漂ってくる微かな臭い、そして鼓膜でも集音マイクでも拾うことができない虫の囁きが聞こえなくなってしまう問題が発生する。
なので、武を極めた兵士にはこの全身を覆う
〈マモル、接触したわよ〉
〈おっといけね〉
昔のことを思い出すのに意識を割き過ぎてしまっていたようだ。
2種類のポイントはすでに接触しており、片方が全速力で逃げ出している最中だった。
「待ってろよ、第一村人!」
ドンッ! と地面を力強く踏んだ。
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