第5章 開示

 俺Dは言った。


「まずお前らに聞いておこうか。正直に答えろよ」

「何のことだ?」

「ハルヒの事だ。……あいつ可愛いよな」


 顔を見合わせる俺と俺Aと俺Bと俺C。


「どうした? 遠慮することはないぞ。ここには『俺』しかいないんだ」

「それもそうだ」

「俺しかいないんなら」

「言っても恥ずかしくもないか」

「ぶっちゃけ言えば」

「メチャクチャ可愛いよな」

「あの灰色空間で2人きりになってさ、朝比奈さんと長門のくれたヒントに気付いた時どう思った?」

「パニクってたけど、結構、ラッキーとか思ってた部分もあったな」

「そうだな」

「次の日学校でさ、あのポニテを見たら……」

「ハート鷲掴みにされたよな」

「何も触れないのがベストだと理性では判ってても、つい声かけちまった」

「言わざるを得ないって、あれは」

「実際似合ってたし」

「ハルヒのやつ、顔色一つ変えなかったな」

「すごい精神力だと思ったよ」

「おい夏祭りの浴衣覚えてるか」

「あれは正直長門よりも朝比奈さんよりも可愛かった」

「あの貰ったタコ焼き。あんなに不味くてあんなに美味いタコ焼は初めてだったなぁ」

「映画撮影で、ハルヒと喧嘩しちまったけどさ……」

「あん時部室でアイツが髪を後ろでくくってたのは、自惚れて……良いんだよな?」

「後で気付いてニヤニヤしちまった」

「入院したとき、病室で……な。あのハルヒの寝顔見たとき……な」

「古泉のヤツ、心底邪魔だったな」

「間違いねえな」

「はは、いなかったら確実に」

「やっちゃってたな」

「クリパのツイスターゲームやばかったよな」

「勝負よりもなによりも、アレ隠すの必死だったわ」

「あんだけ密着しちまったんだ、無理ねえって」

「俺も健全な男子高校生ってこった」

「ははは」

「だな」

「……まああれは全員にモロバレだったのが後で判明するんだが」

「へ?」

「何それ」


 ……決定、こいつらアホだ。真性の超弩級のアホ共だ。


「それはさておいてだ。そんなハルヒよりも、もっと可愛いハルヒが存在するとしたら、お前ら……どうする?」

「なん……だと……」

「……存在するのか?」


 ゴクリと生唾を飲み込む3人の俺。うわあ何これ。痛い、痛すぎる。

 たった今、北高アホランキングは、ハルヒも谷口もぶっちぎり、この俺が単独トップに躍り出た。


 死にたい。

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