第4章 来訪者4

「見本市だ、俺たちの見本市だ」

「ラインダンスでもやるか」

「おい騒ぐな夜中だぞ」

「俺麦茶飲んでくるわ」

「台所は階段降りて左だ」

「アホかてめえは、俺の家だぞ」

「ジョークもわからんのか」

「つまんねえんだよ」

「すげえ。突っ込みが全員にハネ返ってきやがる」

「お前らいい加減に」

「───シャラップ、お前ら」


 いけ好かない微笑をたたえた俺Dが言った。何だその言い草は。そういう似非スマイルはな、古泉みたいなツラがやってるからまだ鑑賞に耐え得るんだ。俺がやったところで薄ら寒いだけなんだぞ。

 大体お前は何しにきやがった?


「お前らの不毛な論争に片をつけにさ」

「ほう。でかい口たたくじゃねえか。お前はいつの時間から来たんだよ?」

「その答えはお前らの楽しみのために取っておくことにするさ」

「?」

「ところでハルヒと付き合って死にかけてる俺はどいつだ?」

「見りゃわかるだろ。そこの顔色の悪い俺だよ」

「うむ」


 なにやら態度のでかい新たな俺はコホンと咳払いすると、


「まずお前に言っておこう。ハルヒとはこのまま付き合うべきだ」


 やれやれ。

 顔色の悪い俺は胡散臭げにそいつを見やり、


「……お前、俺より未来から来たのか? ならわかるだろ。正直あいつの暴走には」

「小さいことだ」


 前髪を捻ってピンとはじく俺D。それは古泉のつもりか? そこまで髪長くないだろお前。


「ハルヒもちょっと浮かれてるだけなのさ。あいつは機嫌がいいと色々暴走しがちになんのは、映画撮影のときに学んだろ?」

「ああ」

「もうすぐハルヒも平常運転に戻るし、弁当も普通の、いや極上の弁当になる。それまでの辛抱さ」

「……しかし」


 食い下がる俺C。遮る俺D。


「だいたいがだな、お前がハルヒの何を知ってるってんだ? ん?」

「入学以来の付き合いだ。あいつのことはよく知ってるさ。ここにいる全員がな」

「いーや、お前らはまだハルヒの可愛さを……あいつの全てを知りはしないんだ」

 

 ……あ、まさかこいつ。

 俺はこの俺Dが、何やら妙に偉そうな態度をとる理由に思い当たった。

 だが、いやしかし……まさか。

 

「え!?」

「あ! 嘘だろ?」

「な、なんだお前らどうした?」


 ニヤリと笑う俺D。


「そうだ。俺は、ハルヒの、全てを、知った」

「マジか……」

「ほんとに?」

「え? …………あ!!」


 まあ付き合い始めたんなら、俺たちも今時の高校生だし、おかしな話ではないよな。

 ないんだが……その、えーっと…………






マジで?

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