第3章 来訪者3
はっはっは。
俺の部屋の中に俺と俺Aと俺Bと俺C。俺カルテット。もう乾いた笑いしか出て来ねえよ。なんだこのカオスな状況は。誰か助けてくれ。神様仏様長門様。
「俺はハルヒと付き合って二週間目の未来から来たんだが……」
そうかいそうかい。もうどうとでもしてくれ。
「単刀直入に言うがな、ハルヒと付き合うのをやめてほしいんだ」
「はあ!?」
「なに言ってんだお前!」
激昂する俺Aと俺B。
「理由を聞かせろ!」
「理由、か……」
暗い顔のままうつむく俺C。こうしてみると目の下のクマも酷えなコイツ。疲労困憊という四文字熟語をそのまま人の姿に変えたような感じの俺。何があったんだ?
しばらく俯いていた俺Cはボソボソと暗い調子で喋り始めた。
「……端的にいえば、ハルヒは俺の手に合う女じゃなかったんだ……ただの部活仲間のときでさえ持て余してたのに、付き合うようになってからは尚更だ」
「ふん」
「夜中、いや朝方近くまで携帯で話して、学校と団活は今までどおり。休日は団活に加えあいつとのデートまで組み込むようになった。貯金も底をついたし、何より俺の体力が底を尽いた……全員あいつのスタミナが半端じゃないことは知ってるよな?」
「む」
「朝、一緒に登校するのはいいがな、彼氏をラジオ体操と太極拳に付き合わせる女子高生なんざ他にいねえぞ」
「うーむ」
「ハルヒが、『今度からお弁当を毎日作ってあげるからね!』 とか宣言してたぞ。それで体力と精神力の回復をはかれば」
「ふりかけ代わりにイモリの黒焼きの粉末がかかってたり、珍しい食材とかいって謎の生き物の唐揚げなんぞ喰わされてみろ」
「ぐ」
「確かにあいつの料理は美味いし、愛情と手間隙かかってるのは十分わかる。だが食うのにあれほど勇気の要る弁当はねえぞ」
「な、何の肉だったんだ? それは」
「わからずじまいだ。詳しく話すとワシントン条約がどうとかいってたが」
「やばくないか、それ」
「いや待て待て、しかしだなあ、せっかくのこのチャンスを」
手を上げ、発言を押しとどめる俺C。
「お前ら……ハルヒだぞ……俺が付き合ってるのは『あの』涼宮ハルヒだぞ」
押し黙る俺たち。
「傍若無人と唯我独尊を絵に描いたら、額装されて美術館に飾られてオークションで最高額で落札される『あの』ハルヒだぞ」
褒めているかいないかでいえば、明らかに褒めてないな、ソレ。
「もういろいろと限界なんだ。せめてハルヒの性格がもう少し落ち着くまでだな……」
「その落ち着くってのはいつの話だよ」
「そうだ。こんなチャンスは二度とめぐってこないぞ」
「付き合うのは俺もやぶさかじゃねえ。だが、このままだと過労で死ぬぞ」
「愛だ、愛で乗り切れ」
「阿呆」
なんか頭痛がしてきた。いろいろ疲れちゃったよ。俺は寝るから、あとはお前らにまかせる。
「「「お前の未来の話だぞ!!もっと真剣になれ!」」」
……ごもっともで。
カチャリ
ドアが開いた。
「ういっす! 雁首そろえてんな、お前ら」
「……」
「……」
「……」
……もうツラを確認する気にもならん。やれやれだ、ああやれやれだ、やれやれだ。
入ってきたのは古泉ばりのニヤケスマイルを貼り付けた俺。
俺クインテット、ここに誕生す。
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