エピソード③ カイ・クロフィード3
口にアツアツの揚げたて葉物天ぷらを入れようとしたその瞬間に警報アラートが部屋の中にジリリリッと鳴り響く。
どうやら、森の中に人が侵入したようだ。
s級のモンスターを倒して名をあげたいだけの冒険者かあるいは―――。
俺は、天ぷらを食べずに対魔物用の服に着替えるとドアの方へと走りだした。
警報アラートの位置を魔法で確認するために、マップを開く。ブゥンという音とともに森の地図が表示された。俺は魔物と人間のアイコンがぶつかり合っているのを見る。
「1人で魔物と戦っているのか……?」
かなり危険な状態であることに間違いない。
魔物は、森の中に複数存在している。
1対1ではない。1対複数の圧倒的な暴力にあうはめになる。
力尽きたところを飢えたモンスターが肉を求めて冒険者を襲い被害が出る可能性もありえなくもない。
「間に合ってくれ……。」
俺は、空中に魔法陣を作成し転移の魔法ですぐにその場に行けるようにした。
事態は一刻を争っている。
俺は、転移する。
着地した場所は魔物と冒険者の戦っているところから少し離れたところだ。
冒険者マークが付いていたが、ハンターによる偽装の可能性がある。
ハンターの場合には、縛り上げて尋問したあと、森の外へとワープさせておかないといけないのだ。
俺はちらりと木の影から様子を見る。
赤色の髪が風に揺れている。
剣が煌めいて魔物の攻撃を何とか防いでいるようにも見えるが、形の良い胸が若干見えており、太ももや二の腕が傷だらけになっていた。
せっかくの良いスタイルをしているのに怪我をしていて後になって怪我が治らなかったら困るなと思ってしまった。
だが、彼女の真紅の目は負けていなかった。
歯を食いしばって必死にs級の魔物「グリーングリズリー」に立ち向かっている。
グリーングリズリーは、その名前の通り緑色の毛並みをした巨大な熊である。魔物の中で群れない単独型の魔物。体長は3メートルを超え、その一撃は大地を粉々に砕く程である。
もし街に出たら、s級の冒険者10人が束で戦っても勝ち目があるかどうかである。
彼女は、グリーングリズリーの攻撃1人で防いで
いる。
かなり腕の良い冒険者であることがわかる。
彼女は、力尽きたのか。
攻撃を防ぎきれなくなってきて、身体の傷が増えていき、服もどんどん破れ見えてはいけない部分まで見えようとしていた。
片膝を着いた。グリーングリズリーは、ヨダレをダラダラと垂れ流し彼女に覆い被さるように襲いかかろうとする。
ピタリとグリーングリズリーが動きが止まる。
止まっているのではなく。俺が鼻を片手で掴んでいるだけ。
俺は、もう片方の手でファイアボールを生成し
グリーングリズリーに放つ。
ファイアボールを受けたグリーングリズリーは、一瞬にして消し炭と化す。
「俺のスローライフを邪魔するやつは闇に葬る」
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