VRMMOのチュートリアル役NPCおじさん、バグった聖剣とゲーム知識で無双する。サービス終了したゲーム世界で、バーチャルアイドルと勇者を仲間にして世直しの旅に出ます。
第27話 おじさん、レッサーデーモンの群れと戦う
第27話 おじさん、レッサーデーモンの群れと戦う
「レッサーデーモンが溶け出したぞ!?」
リリムに斬られたレッサーデーモンは、炎で
「ありが……とぅ…………」
死に際に男は
男を
「まさか【トランスウォーター】で変身した人間だったのですか?」
「そのようだな。【ブラッディソード】で魔力を吸われて正体を現わしたんだろう」
俺は男の死体に近づき、手の平で顔を覆って目を瞑らせる。
男の右腕には、奴隷の証である入れ墨が彫られていた。
「薬を飲まされた奴隷がレッサーデーモンに変身させられたんだ」
「そんな……」
「トランスウォーターでモンスターに変身すると、自我を失って暴れます。ヒトとして死ぬことができて、この方も浮かばれたでしょう」
「気を遣ってくれるのか。ワシさまは平気だ。むしろ怒りでこの手が震えておる!」
リリムはブラッディソードを握りしめて、夜空に叫んだ。
「出てこい! 高貴なる悪魔族を
「どうやら向こうは、ヤられる前にヤッちまおうって腹づもりらしいぞ」
「なんだと!?」
リリムが顔を向けた先――夜空に数十匹の巨大なコウモリが舞い飛んでいた。
こちらに近づくにつれ、その恐ろしい異形が月光の元に晒されていく。
「あれはレッサーデーモンの群れ!?」
「ワタシたちの動きが読まれたのですか?」
「俺たちが伯爵んところで大暴れしたのは密売人も知っているはずだからな。どこかで顔を見られたんだろう」
奴隷に戦闘を任せて自分たちは逃走を図るはずだ。
急がないと行方がわからなくなる。
レッサーデーモンが相手なら、たとえ数百匹が相手でも遅れは取らない。
無銘があればバグモンスターにも有効打を与えられる。
問題は、レッサーデーモンの正体が罪のない奴隷ということだ。
「魔物を大量に召喚されたら厄介です。馬車が戦闘に巻き込まれる前に倒さなくては」
「くっ……! やるしかないのか……」
案の定、リリムは戦闘を躊躇っていた。
仕返しをしたい相手は密売人であって、奴隷ではないのだ。
偽者とはいえ同族を殺すのも心理的な抵抗があるだろう。
だったら……。
「エリカ。リリム。二人に作戦を授ける」
「作戦ですか?」
「俺がレッサーデーモンを無力化するから、その隙を突いてエリカは氷の魔法で動けなくしてくれ。身動きが取れなくなったところをリリムが魔力を吸うんだ」
「そうか! 倒す前にブラッディソードで変身を解いてしまえば……」
「人間に戻せるかもしれない。どうだ、エリカ。やれそうか?」
「可能でしょう。中の人の心身が耐えてくれれば、ですが……」
「可能性が1パーセントでもあるならワシさまはそれに賭けるぞ! 助けられる命がそこにあるのだからな!」
「……っ!」
リリムの
「リリムちゃんの言うとおりです。ワタシはバグに苦しむ人々を救うためにここにいる。これが
「なら決まりだ。いくぞっ!」
俺は二人に声をかけたあと、無銘を携えて前線へ向かった。
敵はまだ空に浮かんでいる。剣士の俺が対空攻撃が可能だとは思っていないはず。
「【ダブルスラッシュ】!」
俺は無銘のブースト効果により、スラッシュの2連撃を空中に放った。
衝撃が波のように広がり、空を飛ぶレッサーデーモンたちの動きを止めた。
「まだまだいくぞ! 【スラッシュ】乱れ撃ちだ!」
レッサーデーモンの群れが立て直す前に、ブーストスラッシュを連続で放つ。
「グギャアアアアアアッ!!」
遠距離から放たれる見えない斬撃の直撃を受け、レッサーデーモンたちは悲鳴を上げた。狙いは連中の羽根だ。飛行能力を失ったデーモンたちが次々に落下する。
ダメージを受けたデーモンたちは、傷口から黒い霧を発生させていた。
【トランスウォーター】で変身した魔物は、血液の代わりに魔力が溢れ出すのだろう。偽者と本物の判別方法に使えるかもしれない
「エリカ、今だっ!」
「【アイスバインド】!」
地面に落ちたレッサーデーモンに対して、エリカが氷の呪縛魔法を使用。
結果、手足を凍らされたデーモンたちは身動きが取れなくなって――
「せやーーーーー!」
真っ赤な刀身を月光にきらめかせながら、リリムが突撃する。
【マジックドレイン】の有効範囲に入ったところで、天高く剣を掲げた。
「真紅の牙を突きたてろ、ブラッディソード!」
「ギャアアアアッ!!!」
ブラッディソードのマジックドレインが発動。
レッサーデーモンたちの体内から魔力を吸い取る。
斬りかかる必要はない。魔力を奪い取ってしまえば……。
「うぅ…………」
トランスウォーターの変身効果が切れて、レッサーデーモンは人間の姿に戻った。
「やりました。作戦成功です!」
「勝ったな、がはは!」
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